第8章 【心ここにあらず】
一方その頃、グリフィンドールの談話室では、ハリーとロンとハーマイオニーがハグリッドの様子を見に行こうと話し合っていた。ハーマイオニーは初め、シリウス・ブラックに狙われているハリーが遅くに出歩くのは良くないと意見したが、ハリーがハグリッドの小屋の周りにはディメンターもブラックもいないと強気に出たので、結局行くことに頷いた。
丁度そこに医務室からクリスが帰って来た。真剣な顔の3人に、クリスは何があったのか尋ねた。
「どうした、みんな真剣な顔して?」
「クリス……私たちハグリッドの様子を見に行こうと思っていたところなの」
「あの騒ぎのあとじゃ、ハグリッドも相当落ち込んでいるだろうからね」
「そうだな、私も行こう」
こうして4人は、厚い雲に覆われた曇り空の中ハグリッドの小屋を目指して歩き出した。運良く先生方には誰も会わずに済み、暗い夕方の芝生の上をコソコソと早足で突っ切って行った。ハグリッドの小屋は明かりが点いており、4人はちょっと気持ちが明るくなった。
「ハグリッド、僕だよ。入っても良い?」
「――ん?ああ、入ってくれ……」
ハグリッドの顔を見た瞬間、これは面倒なことになっていると4人は直感した。ハグリッドは相当深酒をしており、目が虚ろでおまけに息がむせ返るほど酒臭かった。扉を閉めると、ハグリッドはバケツ程もあるジョッキをテーブルに叩きつけた。
「こいつはお笑い種だ。たった1日ももたなかった先生なんてホグワーツ史上初めてだろう」
真っ赤な顔でそう自嘲するハグリッドに、4人はかけてあげる言葉が見つからなかった。4人は黙って目配せしあうと、どうにかハグリッドからお酒を止めさせようと試みた。
「ハグリッド、呑み過ぎよ。それにまだクビになったって決まった訳じゃないじゃない」
「そうだぞハグリッド。それにドラコの奴、2、3日で治るってマダム・ポンフリーが言っていたぞ」
「そうだよ。それに怪我したのだって、マルフォイがちゃんとハグリッドの言う事を聞いていなかったからじゃないか」
「いんや、俺が悪かった。初日だからって気合い入れ過ぎたんだ。生徒に怪我をさせて……当然理事会にも連絡が行った。それにアイツの親父は、魔法省にもツテがある……」