第8章 【心ここにあらず】
そう言うと、ハグリッドはグビッと酒をあおった。完全にヤケ酒に溺れている。確かにハグリッドの言う通り、ルシウスおじ様は色々なところにツテがあって、ハグリッドを追い込んでくるだろう。クリスは落ち込むハグリッドを、なんとかして元気づけてあげたいと思った。
「心配するなハグリッド、いざとなったら私がドラコに直接話をつけてやる」
「そうだよ!それにもしもの時は僕たちがハグリッドに責任は無いって証言するよ!!」
「それにダンブルドア先生だって力になってくれるさ!僕たちが説得する」
それを聞いて、ハグリッドの目からぽろぽろと涙が零れ落ちてきた。ハーマイオニーはその隙にジョッキを取り上げると、扉を開けて中身を全部外に捨てた。
「みんな……みんな、すまねぇ。俺がしっかりしなきゃいけねぇのに……お前たちに心配かけさしちまって」
「気にしないでよ」
「僕ら何とも思ってないさ」
間近で嗅ぐハグリッドの息はものすごく酒臭かったが、これでハグリッドがヤケ酒を止めてくれるなら安いものだ。皆してハグリッドの肩をたたくと、ハグリッドはシャツで乱暴に涙を拭き、外に行ってたらいで顔を洗ってきた。
「ああ、なんだか少しだけ力がわいてきた。ありがとう、みんな――」
ハグリッドはそこで言葉を切ると、まるで今初めてハリーをみたように大きく目を見開いた。そして大きな声で怒鳴った。
「お前ぇさん達!今何時だと思ってる!!もうこんな時間に城の外をうろつくんじゃない!」
突然のハグリッドの変貌に、4人は驚いてたじたじになっていると、ハグリッドは無理矢理片手で4人の手をいっぺんに掴んだ。
「帰るぞ!俺が城まで送っていく!!こんな時間にハリーが出歩くなんて2度とあっちゃならねぇ!!!」
怒ったようにドスドスと大股で歩くハグリッドに、文字通りずるずると引きずられながら、4人はホグワーツ城へと戻って行った。