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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第8章 【心ここにあらず】


「クリス、本気で婚約を破棄するつもりなのね?」
「もちろん。今までおじ様やおば様が怖くて言えなかったが、今なら言える!私は将来、必ずルーピン先生と結婚するぞ!!」
「やったわ!これで邪魔者はいなくなったわ!!クリス、私貴女の事大っ嫌いだけど今回だけは応援するわ」
「私もお前の事が大っ嫌いだが、今回だけはあり難く思おう!」

 何とも言えない連帯感、いや、奇妙な絆で結ばれた女2人のあまりの急展開ぶりに、呆気に取られていたドラコだったが、頭を振って意識を現実に引き戻した。

「待て待て!2人共落ち着け。本当にそんな事が出来ると思うのかい?もしそんな事になってみろ、父上が黙っていないぞ。それに教師の分際で生徒をたぶらかしたなんて事がばれたらクビどころか、まともな職にも就けなくなる。クリス、そんな事になっても良いのかい?」
「上等、愛の前に障害はつきものだ」
「分かるわ~、クリス。私もそうだったもの……」
「君はちょっと黙っていてくれないか、パンジー」

 ドラコが少しきつく突っぱねる言い方をすると、パンジーはしゅんとなって押し黙った。今度はクリスに目を向けると、ドラコは真剣なまなざしで彼女を見つめた。ブルーグレイの瞳が、冷たく輝いている。

「クリス、本当にあの屋敷しもべ以下の男と結婚する気なのか?」
「本気だ。私は先生の外見に惚れたんじゃない、先生の内面に惚れたんだ」
「内面?ハッ、出会ってまだ1週間も経っていないというのにそんな物が分かるって言うのかい?」
「分かるさ、これは運命の出会いだって」

 クリスも真っ直ぐドラコを見つめた。しかしいつもの血の様に赤く鋭い目つきではなく、そこには余裕すら感じられる優しさの様な物があった。愛とは、これほど人を変えるものなのだろうか。

「じゃあな、また明日も来てやるよ。それまで安静にしてろよ、ドラコちゃん」

 最後にクスリと笑いながら医務室を後にすると、ドラコは手近にあった水差しを放り投げた。陶器の割れる音がして、パンジーが「キャッ」と小さく悲鳴を上げた。突然の物音にマダム・ポンフリーが駆けつけてきたが、ドラコの目には全く入っていなかった。

「運命の出会いだって?笑わせる――絶対婚約破棄なんてさせないからな」

 ドラコの瞳には、嫉妬というギラついた光が宿っていた。
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