第8章 【心ここにあらず】
嵐のような昼食が終わった後、ついに待ちに待った『マグル学』の授業が待っていた。この教科だけは夏休みから力を入れていて、予習はバッチリ、教科書も隅から隅まで読みこんだ。
ワクワクしながらハーマイオニーが談話室に来るのを待っていたが、待てど暮らせどハーマイオニーが現れる気配がない。おかしいと思いながら懐中時計で時間を見ると、もう授業が始まる10分前だ。初めの授業から遅刻しなてなるものかと、ハーマイオニーが来るのを待ちきれずクリスは急いで『マグル学』の教室に向かった。
初めて来た『マグル学』の教室の中は、クリスの興奮を抑えきれないマグル製品がそこら中に置かれていた。『テレビジョン』『ビデオデッキ』『ラジカセ』それに棚には数えきれないほどの電球と乾電池。こそれに良く分からない赤と黒のケーブルや、小さなメーターの付いた機器。それら全てが使い古された物だと分かったが、それでもマグル製品愛好家のクリスからしてみれば喉から手が出るほど欲しい物ばかりだ。
「みなさん、今日から授業を担当するチャリティ・バーベッジです。どうぞ宜しく」
先生が入ってきて、皆に挨拶をした。とうとうハーマイオニーは間に合わなかったかと思ったその瞬間、突如隣りにハーマイオニーが息を切らせて座っているのに気づいた。思わずクリスは驚いて叫びそうになり手で口を押えた。
「ハッ!……ハーマイオニー、一体いつ教室に入って来たんだ?」
「え?あ、あぁ、今さっきよ」
ハーマイオニーは肩で息をしており、頬は赤く熱っている。大広間を早めに出たにしてはおかしい。しかし授業が始まると、クリスの意識は授業に集中した。まず1学期は簡単にマグルの歴史から始める事になった。
マグルは世界四大文明という、川を利用して文明を発展させていったと考えられると先生は説明した。それぞれエジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明の4つに分けられているという。クリスは一言も聞き逃すまいと全神経を集中させていたので、授業が終わった後、隣りにハーマイオニーが忽然と姿を消している事に気づきもしなかった――。