第8章 【心ここにあらず】
『マグル学』が終わり、満面の笑みで談話室に戻って来ると、クリスはまずマグル学がいかに素晴らしいかをハリーとロンに説き聞かせた。しかし何故かハリーもロンも、そしてなぜか同じ授業を受けていたはずのハーマイオニーも表情が暗い。話しを聞くと、なんでもハグリッド初の授業である『魔法生物飼育学』の授業で、ドラコがヘマをしてヒッポグリフに引っかかれたらしい。それを聞いて、クリスの口角がニヤリと歪んだ。
「そ~か、そうか。じゃあお見舞いに行ってやらなきゃならないな~」
こんな美味しいネタを掴んでおいて、からかわない手はない。クリスは早速医務室に行こうとしたが、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人に止められた。
「ちょっと待って、君マルフォイをからかいに行くつもりじゃないよね?」
「お願いよ、クリス。そんな事をしたらハグリッドが本当にクビになっちゃうかもしれないのよ」
「せっかく念願の教職につけたんだ。1日で終わらせたくないだろう?」
「まあ、その気持ちは分からなくはないが、こればっかりは無理だな。それにドラコの事だ。もうとっくに両親に手紙が行っているさ」
だから、潔く諦めたまえ。と言うと、クリスは制止する3人に手を振ってさっさと医務室へ向かってしまった。
クリスは医務室の前に立つと、こっそり中の様子を窺った。するとカーテンで仕切られた一角に、少女の泣き声と聞きなれた少年のうめき声が聞こえる。クリスは小さく咳ばらいをすると、堂々と扉をノックして医務室へ入って行った。
「マダム・ポンフリー!ドラコが怪我をしたって聞いたんですけど、大丈夫ですか?」
なるべく心配して慌ててきた演技をしながら、クリスはマダム・ポンフリーに話しかけた。当然だがマダム・ポンフリーもクリスとドラコの関係を知っている。クリスの慌てた様子を見て、安心させるように肩を優しくたたいた。
「大丈夫ですよ、傷も思ったより深くなく、2、3日すれば元に戻ります」
「良かった。でも、一応顔だけでも見て良いですか?」
「ええ、もちろん構いませんとも。ですが、あまり騒ぎ立てないように」
それだけ言い残すと、マダム・ポンフリーは奥へ引っ込んでいった。クリスは絶好のチャンスだと思い、ニヤリと笑うとドラコの寝ているベッドへと近づいた。