第7章 【占い学と死神犬】
新しい学科の『占い学』は、北塔の天辺でやる予定になっている。4人はまだ北塔に行った事はない上に、先生がどんな性格かも分からない。もしマクゴナガル先生の様な時間に厳しい先生だったら大変だ。4人は慌てて大広間を後にすると、北塔を目指して走りだした。
* * *
「こんな……遠いなんて……僕……聞いてないよ……」
息も絶え絶えに、ハリーが呟いた。北塔は思ったよりも遠い上に、上りの階段が多すぎる。しかもクリスは教科書や筆記用具などの荷物を持ちつつ、身の丈ほどもある召喚の杖を持って移動しないといけないのだ。他の3人よりも疲労度が増しており言葉すら出てこない。ハアハアと息を吐きながら、ハリー達の一番後ろを歩いていた。こんな時、己の体力のなさが恨めしい。
「まだ着かないのか?……いったい何段階段を上れば良いんだよ」
「多分もうすぐだと思うわ。ほら、窓から湖がこんなに小さく見える」
「わ……私の感だと……まだ先だ。クソッ!こんな事が……分かっていたら……『占い学』なんて、取らなかったのに……」
今度授業に来る時までに、絶対に近道を探してやるとクリスは心に決めた。でなければこんな状態でまともに授業を受ける事なんて出来ない。やっと3人の待つ階段の踊り場に出ると、クリスは召喚の杖につかまりながら、ふうーっと大きくため息を吐いた。
「クリス、北塔までの道分かる?」
「分かるが……その前に休憩だ。疲れて……もう一歩も歩けない」
「そんな事してる暇ないよ。ほら、荷物持ってあげるから歩いてよ」
「あぁ、すまない。助かる」
ロンに荷物を持ってもらうと、クリスはやっと顔をあげた。その時、目の前の絵画からドシンッ!と大きな音が聞こえてきた。見ると手足の短い小太りな騎士が、これまた手足の短い小太りな馬から落っこちたところだった。
「うぬっ、なんたる不覚――貴様ら!一体何を見ておるのだ!さては今しがた落馬した我を見て嘲りに来たか!?」
「……馬鹿か?こいつ」
クリスが4人を代表して率直な感想を述べると、小太りな騎士はいきなり剣を抜き、それを怒りに任せて荒々しく振り回した。が、剣が長すぎて重心を失い、派手に前のめりに突んのめった。それを見て、4人は思わず吹き出してしまった。それを見た騎士はますます怒って顔を真っ赤にした。