第6章 【命短し恋せよ乙女】
ハグリッドは感動のあまり、4人を大きな腕でぎゅっと抱きしめた。ちょっと苦しかったが、それほどハグリッドが喜んでいる証拠だと思うと、何も言えなかった。
「まだ夢みたいだ……これは俺がやりたくて、やりたくて仕方がなかった仕事だ。ダンブルドア校長先生は、ケルトバーン先生が辞職すると、他の誰でもなく、すぐに俺の小屋に来て、この仕事を任せたいと仰ってくださった……本当にありがてぇ話しだ。――ところで、みんな俺の授業はとってくれたのか?」
「あぁ……すまないハグリッド。私は『魔法生物飼育学』は選択しなかったんだ。でも、休みの時はまた必ず遊びに行くよ!」
「そうだな、休みの時はまた4人そろって遊びに来てくれ」
ハグリッドはそう言うと、また大きなハンカチを取り出してチーンッと鼻をかんだ。そろそろ大広間にいた生徒達も少なくなってきて、マクゴナガル先生が早く寮に行くよう視線を送ってきた。仕方なく寮に戻ろうとするハリー達に、クリスは素早く耳打ちした。
「みんな、悪いけど先に行っててくれ。直ぐに追いつく」
「えっ?なんで?」
「良いから、ほんの少しの間だけだ」
言うや否や、クリスは早足で教職員テーブルを突っ切った。そして大広間を後にしようとしていたルーピン先生に、ぎりぎりのところで声をかけた。
「ルッ……ルーピン先生!」
「ん?ああ、君は確か同じコンパートメントにいた――」
「グリフィンドール寮の3年生、クリス・グレインです!せ、先生……れれれ列車の中では、たた助けてくださてありがとう御座います!」
ルーピン先生を前にすると、緊張のあまり上手く下が回らなかった。それでも顔を真っ赤に染め、クリスは精一杯の感謝の言葉を口にした。
「気にする事ないよ、教師として当然の事をしたまでだからね。でも、わざわざお礼を言いに来てくれたのは君だけだ。こちらこそありがとう」