第6章 【命短し恋せよ乙女】
ルーピン先生は、にっこりと笑いながら握手を求めてくれた。クリスは震える手でルーピン先生の手を握ると、心臓が締め付けられるようにぎゅーと痛くなった。そして何も言えずに勢いよくお辞儀をすると、駆け足で大広間を後にした。
自分の心臓に手を当ててみると、まるで早鐘のように心臓がドキドキしているのが分かる。間違いない、これは――『恋』だ!!
「――いったいあの継ぎはぎだらけのボロ布と何を話していたんだい?」
「うわっっ!!?ドラコ、お前いつからそこにいたんだ!?」
誰もいないと思っていた柱の影から、突然ドラコが姿を現した。後ろにはいつも連れているクラップとゴイルの姿は無い。ドラコは腕を組みながら、横目でクリスを睨んだ。
「君、まさかとは思うけどあのボロ雑巾に気があるなんて言わないよな?」
「気がある?違うな、これは『恋』だ!!私はやっと理想の人に巡り合えたんだ!」
「な、ななななんだって!!?クリス、君は気は確かか?相手は親子ほど年の離れている中年だぞ!それもあんなボロッ布を被って、見るからに金も持っていないぞ!」
「チッチッチ――ドラコ、愛はお金じゃ買えないものだぞ。それに歳の差が何だ。愛さえあれば歳の差なんて……」
完っ全に恋に恋する乙女モードに入ってしまったクリスを止められるものなど居ようか。クリスはルーピン先生と握手した右手を頬に当て悦に入ると、そのままスキップを通り越して踊りながらグリフィンドール寮へと向かって行ってしまった。そのあまりの変貌ぶりに、一応許婚であるドラコ・マルフォイはただ茫然と彼女の後姿を見送るしかなかった。