第6章 【命短し恋せよ乙女】
「それでは今度は楽しい話題に移ろうかの。今学期から、新たに2人の先生を迎えることになった。1人はケルトバーン先生が受け持っていた『魔法生物飼育学』の後任で、皆も知っての通り現職の森番であり、加えて『魔法生物飼育学』を教えることになったルビウス・ハグリッドじゃ」
それを聞いて4人は顔を見合わせた後、立ち上がって手が痛くなるほど大きな拍手を送った。ハグリッドは生徒達から、またグリフィンドール生徒達から大きな拍手で迎えられている事にえらく胸を打たれたのか、真黒でコガネムシのような目をぎゅっとつむり、目頭を親指と人差し指で押さえていた。それから大きなハンカチを取り出して、拍手の音に負けないくらい大きく鼻をかんだ。
「次に、空席になっていた『闇の魔術に関する防衛術』の新しい先生として、リーマス・ルーピン先生を迎えることになった」
その瞬間立ち上がってバチバチとひと際大きく手を叩いた――のはクリス1人だけで、他のテーブル席からはまばらにパラパラと拍手が聞こえてくるだけだった。ハリーもロンもハーマイオニーの3人も、座って普通に拍手を送っている。むしろ、立ち上がって興奮しているクリスを見てぽかんと口を開けている。それを見て、クリスは恥ずかしくなってサッと席についた。
「君、そうとう――」
「うるさい!……今は何も言うな」
クリスは真っ赤になって唇をかみしめた。その後すぐに、ダンブルドア校長の合図で空っぽだった大皿に豪華な夕食が現れると、生徒の関心はみんなそっちに移った。
しかしクリスだけは、食事をひとくち口に入れては教職員テーブルをチラリと見て、また一口食べては教職員テーブルをチラリと見ていた。いつもならお腹が減っているのに、今日は胸がいっぱいで食事もままならない。それもこれも全部、ルーピン先生に助けられてからだ。ずっと憧れ続けていた理想の人に出会えて、クリスの頭の中はお花畑でいっぱいだった。
最後にデザートがなくなると、皆それぞれ勝手気ままな校歌を歌って、始業式は終わりを告げた。生徒達が自分達の寮に戻ろうとしているのを尻目に、4人は急いでハグリッドの元へ向かった。
「就任おめでとう、ハグリッド!!」
「ありがとう、みんな……みんなお前ぇさん達のおかげだ」