第6章 【命短し恋せよ乙女】
ハリーがこっそり耳打ちした直後、教職員テーブルの中心に座っていたダンブルドア校長先生が立ち上がった。
何千と言う目がダンブルドア校長に集中している。ダンブルドアはまず半月形のメガネの奥から生徒たち全員の顔を見回すと、ゆったりと微笑んだ。
「新学期おめでとう。また皆の元気そうな顔を見れて大変嬉しく思う。本来ならこのまますぐにでも宴会を始めたいんじゃが、まず皆に幾つかお知らせがある。1つはとても深刻な問題じゃから、真っ先に片付けてしまおう」
それまで柔和な笑みを浮かべていたダンブルドアが、急に真剣な表情を見せた。生徒達はそれを見て反射的に姿勢を正した。
「皆ももう知っておる通り、ホグワーツにアズカバンの看守でもあるディメンターを受け入れる事になった。これは魔法省の決定事項に沿っての事じゃ。ディメンター達はホグワーツの入り口全部に配置しておる。なので許可なく学校から離れようとしてはならん。決してあの者達に近づくでない。あの者達は話しの通じる奴らではないし、変装や悪戯も無駄じゃ。当然“透明マント”もな」
その時、ダンブルドアのブルーの瞳がハリーを捕らえた。この学校で、透明マントを持っているのはハリーだけだと言う事を、ダンブルドアは知っている。そして、ハリーが他の生徒に比べて少々冒険心が強いことも。ダンブルドアはなおも続けた。
「もう一度言おう。生徒達は絶対に、あの者達に危害を加えるような事をせんように!監督生諸君、並びに主席の生徒達は、他の生徒達がディメンターに近づかない様注意して欲しい!」
こんな風にダンブルドアが真剣になったのは、いつ以来だろう。2年前の禁じられた廊下の時でさえ、ここまで真剣に話してはいなかった。それほど、ディメンターと言う奴は危険なのだろう。確かに、もしあの時コンパートメントにルーピン先生が居なかったかと思うと、ぞっとする。クリスは再び背筋が凍るような思いがした。
ダンブルドア校長は、再び生徒達をぐるりと見渡し、誰もが真剣そのものの表情であることを確認すると、やっといつもの穏やかな表情に戻った。