第6章 【命短し恋せよ乙女】
「ポッター!グレンジャー!2人とも今すぐ私のところにいらっしゃい!」
呼ばれた瞬間、ハリーとハーマイオニーの肩がビクッと動いた。マクゴナガル先生は厳格な性格で、重要な用件がある時か、校則を破った時以外は、まず呼び出しなんてしない人だ。そんな先生に名指しされたので、2人は何事かと恐る恐る先生の顔を見た。ロンとクリスも、同じように名前を呼ばれるのではないかと内心冷や冷やしていた。
「ウィーズリー、グレイン。あなた方は皆と同じように大広間に行きなさい、間もなく組み分けが始まります。ポッターとグレンジャーは私に着いて来なさい」
言われるがまま、ハリーとハーマイオニーの不安そうな背中を見送ってから、ロンと一緒に大広間に入った。
大広間は例年通り何千と浮かぶ蝋燭が金色に輝く大皿をきらきらと灯し、各寮によって分けられたテーブルには、既に大勢の生徒たちが座って組み分けが始まるのを今か今かと待ちわびっていた。
そんな中、ロンとクリスは額をくっつけあってヒソヒソと話をしていた。
「なんであの2人だけ呼び出されたんだ?まさか去年みたいにもう校則を破ったんじゃないよな?」
「まさか!今年は大人しくしてたぜ?まあハリーは伯母さんを膨らませて一騒動あったけど、あれは魔法省からお許しが出てるんだ。いくらマクゴナガル先生だって魔法省には逆らえないよ」
「じゃあ何だろう……模範生が服着ている様なハーマイオニーが罰則を受けるようなことをしたとは思えないし……そもそも彼女は夏休みの大半はフランスに行っていたって言っていたしな。夏休み中ハリーとの接点は薄いし……」
「――やっぱりあれかな?列車で倒れた件?」
「じゃあなんでハーマイオニーまで呼び出されたんだ?倒れたのはハリーだけだ」
「う~ん……」
そうこう考えている内に、フリットウィック先生が三本足のスツールと共にしわしわの三角帽子を持ってきた。いよいよ組み分けが始まる。ロンとクリスは一旦話を止めて組み分け帽子に視線を移した。
生徒は皆静まり返り、中央の組み分け帽子に注目している。ボロボロの組み分け帽子はプルプルっとふるえて、継ぎはぎだらけの縫い目から不思議な唄を歌い始めた。