第6章 【命短し恋せよ乙女】
そこまでは良かったのだが、ホグワーツ城の門の両脇に、またしてもディメンターの姿があった。それを見ただけで、クリスも、そしてハリーも気分が悪くなって、下を向いてディメンター達の傍を通り過ぎるのをじっと堪えていた。
それにしても、何故ディメンターがコンパートメントに入って来た時、左手首がまるで焼き鏝をあてられたかのように痛み出したのだろう。確か左手首の痣は、『例のあの人』の力と関係しているはずなのに……。
クリスが思案に耽っていると、ガコンと馬車が音を立て、ホグワーツ城に到着した。順番に馬車を下りていくと、何処からともなく嫌みったらしい聞きなれた声が耳に入ってきた。
「やあ、ポッター。列車の中で気絶したんだって?あのボロッ布を羽織った男が車掌に話していたのが耳に入ったんだが、本当に気絶なんてしたのか?」
声の主は他でもない、幼馴染のドラコ・マルフォイだ。ハリーをいじるネタを手に入れると、いじわるそうな笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた。毎度の事ながら、クリスはハアッと息を吐いた。
「ドラコ、今のうちに止めておかないと痛い目を見るぞ」
「やあクリス、何か勘違いをしていないかい?僕はただ本当の事を聞きたいだけさ。ポッターが列車の中で気絶したって。それともポッター、あの怖い怖~いディメンターの所為で、口もきけなくなったのかい?」
「君たち、何をしているんだい?早く城の中に入らないと風邪をひくよ?」
その時、不意にルーピン先生の声が耳に入った。クリスは驚いて心臓がひっくり返るかと思った。ドラコはルーピン先生の継ぎはぎだらけのローブや痩せた体つきを見て、どこか馬鹿にしたような眼をした。
「ご忠告どうも――先生。いくぞ、クラップ、ゴイル」
最後にフッと鼻で笑うと、腰ぎんちゃくのクラップとゴイルを連れて、ドラコ達は城の中へ入って行った。その態度にクリスはこれ以上ないってくらい頭に血が上ったが、先生の前で野蛮なことはできない。仕方なくハーマイオニーに宥められながら4人とも城の中へ入って行った。
城に一歩入った瞬間、4人は人の流れに沿って広々とした玄関ホールを通り、何千という蝋燭で照らされた大広間に入ろうとした。その瞬間、頭の上から寮監であるマクゴナガル先生の声が響いてきた。