第1章 【The summer vacation ~Ronald~】
「うわっ!ガラス張りの壁が突然開いたよ!?」
「そんなに驚くと魔法使いだってばれるぞ。これは自動ドアと言って、何もしなくても勝手にドアが開くんだ。凄いだろう!」
クリスは何故か自慢げに、慣れた動作で自動ドアを通ると、店内に並ぶ電化製品に瞳をキラキラ輝かせた。
ロンも、家のガレージで幾つか電化製品を見た事はあるが、新品の、しかも新商品の電化製品が並んでいるのを見るのは初めてだった。クリスはロンの手を離れ店内にあるテレビに触れた。
「あぁ!憧れの『テレビジョン』良いなぁ、家にも一台欲しいなぁ……あっ、これは『ラジカセ』ではないか!しかも『MD録音機能付き』だ!」
店内でこんなに騒いでいたら、クリスの方こそ魔法使いだとバレそうだと思ったが、もうスイッチの入ってしまったクリスを止められる方法は無い。
店内の蛍光灯を見ては「家のシャンデリアと交換したい」とぼやいたり、乾電池によだれを垂らしそうなほど見入っていたり、とにかく店内の製品を全て眺めては、あーでもない、こーでもないと感想を述べながら店の商品に見入っていた。
「良し!次の店に行くぞ、ロン!!」
そう言うクリスの手には、電化製品のパンフレットが山ほど握られていた。見るに見かねて店の人がパンフレットを入れる袋をくれ、クリスのテンションは急上昇した。
「やった!パンフレットだけじゃなく紙袋まで手に入れたぞ!!今日は運が良いな」
「……それで?今度はどこに行くの?」
「ふっふっふ、それは付いてからのお楽しみだ!行くぞ、ロン!!」
そう言って、またロンの手をとって走り出した。そうしてついた先は、洋服屋が立ち並ぶショッピングモールだった。綺麗なコーディネートをされたマネキンが何体も並んでおり、またもクリスの目がキラキラと輝いた。
「ここで何するの?まさか洋服を買って帰る気?」
「ノン、ノン。買って帰るとまた家の屋敷しもべが煩いからな。ここでは試着だけする。それも、お互いの服を選ぶんだ」
「お互いの?!」
それを聞いて、ロンはどうしようか迷った。
女の子の服なんて、産まれてこの方選んだことが無い。しかもいつものクリスなら黒いローブで十分だろうけど、今日のクリスに似合う服を選ぶなんて、正直言って自信が無い。