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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第1章 【The summer vacation ~Ronald~】


 電気屋に行くまで、クリスは嬉しそうにマグルの町を歩いていた。こんなにのびのびとしているクリスを見るのは初めてだ。本当にマグルが好きなんだと思い知らされた。
ポストを見れば、悪戯に手を突っ込んでみたり、街灯を見れば片手でつかまってくるくる回ってみたり、マグルの町を歩いているだけで嬉しそうにしている。そのうちスキップで歩き出すんじゃないかとロンは思った。

「それで?その電気屋さんってどこにあるんだい?」
「その先の角を曲がったところだ、小さいけど、色々なものが売っているんだ!」

 ロンより数歩先を歩きながら、クリスが明るい声で答えた。こんなに笑顔で歩くクリスを、ロンは見たことが無かった。もしかしたら、これが本当の彼女の姿なのかもしれない。純血主義の人達に囲まれて生活していなければ、こんな明るい少女に育っていたかもしれないのだ。そうなると、いつものどこか気怠そうな空気を醸し出しているクリスを思い出し、何だか胃に石ころが詰まったような不思議な感覚に陥った。

「おーい、ロン!こっちだ、こっち!!」

 そんなロンの心中などお構いなしに、クリスはどんどん先の方へ行ってしまっていた。「早く、早く」と遠くの方で手招きしているクリスは、もう待ちきれないと言った様子だ。ロンは走ってクリスに追いついた。

「そんなに急がなくても、電気屋は逃げやしないだろう?」
「言ったじゃないか、この変身は時間制限があるって。電気屋さんだけじゃなく、まだまだ回るところは沢山あるんだ。ほら行くぞ!」

 そう言ってロンの手を取ると、クリスは走って横断歩道を渡った。ちょうど赤信号になるか、ならないかの所で横断歩道を渡り切り、2人は軽く肩で息をした。

「あー、危なかった。マグルの車は、魔法界の車のように向こうから避けてはくれないからな」
「だからって、そんなに急がなくても……」
「言っただろう、1分1秒が惜しいんだ。ほら、早く行くぞ!」

 ロンの手を握ったまま、クリスは駆け足で路地を抜けた。そしてお目当ての電気屋さんに着くと、扉の前でピタリと止まった。すると自動的にドアが開いて、思わずロンは驚きの声を上げた。
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