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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第5章 【second contact】


「変よ、まだ着くには早すぎるわ」

 ハーマイオニーが腕時計を見ながら言った。ハリーはコンパートメントから顔を突き出して、辺りを窺っている。他のコンパートメントからも同じように様子を窺っている生徒が出てきた。すると、急にランプの明かりが消え、真っ暗になってしまった。誰がどこに居るのかも分からない。みんな完全に手探りで辺りの状況を確認しようとしていた。

「アイタッ!ちょっと、誰?私の足を踏んだの?!」
「ごめん、僕だよ。周りが見えなくて――イテッ!」
「すまん、私だ。こう見えなくっちゃどうしようもなくて……うわっ!」

 誰かの足に躓いて、クリスは転びそうになった。しかし襲ってくるはずの痛みは訪れず、代わりにクリスは少し柔らかい何かにすっぽり収まった。

「皆、落ち着いて!」

 低い大人の声が、クリスのすぐそばで響いた。その時、クリスはルーピン先生の腕の中に飛び込んでしまったのだと気づいた。クリスはビックリしてすぐその場から飛びのいた。
 ルーピン先生は杖明かりを出して、コンパートメント中を照らした。先生の顔は真剣そのものだ。そして先生がドアに近づくと、ドアがゆっくりと開いた。

 そこに立っていたのは、この世の者とは思えないゴーストの様な者だった。真っ黒いローブを目深にかぶり、そのローブの奥底から何かを吸い込んでいる音が聞こえた。――その時、突如クリスの左手首が熱を持った風に痛みだし、強い不快感に襲われた。
 体は氷の中にいるように冷たく、寒いのに、左手首だけが焼き鏝を当てられたように痛み出した。誰かに助けを求めたいのに、声はどこかに行ってしまったように言葉が出てこない。それどころか、息さえうまく吸えない。――誰か助けて、お願い、誰か……。

「大丈夫、僕に任せて」

 耳元で微かに聞こえる春風の様に優しい声と、左手首を包み込む慈愛に満ちた暖かさを感じた時、、ふっとクリスの痛みが和らいだ。それから、先ほどとはうって変わって凛とした声が耳に入ってきた。
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