第5章 【second contact】
「そっ、そう言えば、3年生からホグズミードに行けるんだよね!」
暗い雰囲気の中、突然ロンが沈黙を破った。少しでも周囲の空気を明るくしようとしたのか、顔は満面の笑みで、おまけに声は異様に弾んでいた。
「みんな行った事ある?僕、ハニーデュークスが大好きなんだ!!」
「ホグズミードって言えば、私も本で読んだことあるわ!唯一魔法使いだけの村なんでしょう?」
明るいロンの話題に、ハーマイオニーも乗っかった。不味い、ハリーの前でホグズミードの話しは禁句なのだ。きっと余計に落ち込んでしまう。クリスは何とか話しを別のところに持っていこうとしたが、クリスの思いとは裏腹に、2人の話しは盛り上がる一方だった。
「あー、そう言えば3年になったら選択授業が――」
「ロンはもうホグズミードに行った事あるの?私どうしても『叫びの屋敷』と小鬼の反乱の本部になった旅籠だけには行ってみたいのよね。本にも載っていたし!」
「何て言ったってハニーデュークスのお菓子はみんな面白い上に美味しいって評判なんだ。食べると口から煙が出る激辛ペッパー、イチゴのムースやクリームがいっぱい詰まってるふっくらチョコレート。それに砂糖羽ペン――授業中にこれを舐めていたって、何を考えているのか分からないふりが出来るんだ……」
2人は話しに夢中で、ハリーの機嫌が右肩下がりなのに気づいていない。会話に混ざれないハリーは俯いて、手持ちぶさたそうに指をくるくる回して、明らかに気持ちが沈んでいる。その様子を見て、やっとロンがハリーに問いかけた。
「どうしたの?ハリー、楽しみじゃないの?」
「そうじゃないんだけど――僕、ホグズミードにはいけないんだ。ダーズリーおじさんが許可証にサインをしてくれなかったから」
それを聞いて、ロンは急に口がきけなくなったように、口だけをパクパク動かした。その顔にはとんでもないと書いてある。
「ホグズミードに行けないだって!?そんなことって――きっとマクゴナガル先生か誰かがサインしてくれるよ」
「そうだと良いけど……」
「それじゃなきゃフレッドとジョージに聞けばいいよ。あの二人なら城から抜け出す道を全て知ってるんだ」
「ロンッ!!」
ロンの発言に、ハーマイオニーがバシッと突っぱねる様に大きな声を出した。