第5章 【second contact】
「それで?話って何なんだい?」
「脱獄したシリウス・ブラックっているだろう。あいつの目的は……実は僕なんだ」
「何だっ――!?」
叫びそうになったロンの口を、ハーマイオニーとクリスが塞いだ。そしてもう一度ルーピン先生の方を見て、起きていないことを確認すると、ハリーはひそやかな声で話を続けた。
「実は、昨日の晩ウィーズリーおじさんとおばさんが話してるのを聞いちゃったんだよ。僕がマージ伯母さんを膨らませても処罰にならなかったのはその所為らしい。その方が僕を監視できるから……。実際にブラックは不可能と言われたアズカバンから脱走し、僕を探しているって。ブラックは狂っているんだ、ブラックはヴォルデモートの腹心で、僕が死ねば13年前の力が戻ってくると思っているらしい。さっきもおじさんに最後の忠告を言われたよ」
それを最後に、コンパートメントの中がシーンと静まり返った。ロンは口がきけなくなってしまったみたいに茫然と口を開けていたし、ハーマイオニーは信じられないと言う顔をしていた。クリスは朝の胸やけがまたぶり返してきたみたいに気持ちが悪くなった。それぞれ皆、ハリーにこんな災厄が降りかかって来るなんて思ってもみなかった。
静まり返ったコンパートメントの中で、一番最初に言葉を発したのはハーマイオニーだった。
「それじゃあ、シリウス・ブラックが脱獄したのは彼方を殺すためだったって言うの?ねぇ、ハリーお願いよ。今学期だけは大人しくしていて、自分からトラブルに飛び込んで行ったりしないでね」
「僕がいつ自分からトラブルに飛び込んで行ったりしたよ、みんなトラブルから飛び込んできたんだよ!」
「しー!ハリー、気持ちは分かるけど声を押えて」
クリスはルーピン先生の方を見ながら注意した。先生はもぞもぞと体を動かしたが、起きる気配はなかった。
しかし、考えれば考えるほど、ハリーにとってこれは酷な状況だと思い始めてきた。相手は脱獄不可能と呼ばれたアズカバンから脱走した狂人だ。しかもハリーだけを狙っている。それも相手は脱獄してから3週間、まだ足取りの一つも掴めていない。これでは頼みの綱のホグワーツも、どこまで安全か分からないのだ。