第5章 【second contact】
目の奥ガツンと痛くなり、最後の方は聞き取りづらくなってしまったが、ウィーズリー夫人にはちゃんと届いているようだった。ウィーズリー夫人は大きな手提げからハンカチを取り出すと、それで涙を拭いてクリスを送り出した。
汽笛がボーっと鳴り、クリスとロンとハーマイオニーとジニーは窓を開けてウィーズリー夫人に手を振った。ハリーはウィーズリー氏と何か話しているらしく、まだ乗り込んでいない。脳裏に1年前の悪夢がよみがえる。
「アーサー、早く!」
ウィーズリー夫人に急き立てられるようにして、ハリーは発車する列車に飛び乗った。5人はウィーズリー夫妻が見えなくなるまでずっと手を振っていた。一段落ついて、コンパートメントに座ろうとした時、ハリーが小さく声をひそめた。
「悪いけど、3人に話したいことがあるんだ」
「ジニー、どこか行ってて」
4人だけの秘密の話しに自分だけ入れてくれないことに腹を立てたジニーは、怒って友達のいるコンパートメントに行ってしまった。
4人は誰もいないコンパートメントを探したが、最後尾のコンパートメントに、客が1人いるだけのコンパートメントしか見つけられなかった。客と言っても、大人の魔法使いで、つぎはぎだらけのローブを頭からすっぽりかぶり、顔は見えない。しかし規則的に聞こえる呼吸音から、眠っている様子だった。取りあえず、4人はそこに座ることにした。
「この人、誰かな?」
「ルーピン先生」
起こさないようにひっそりと言ったロンの質問に、ハーマイオニーが当然だと言いたげに即答した。どうして即答できるのかロンが訝しげな顔をした。
「どうして分かるんだよ?」
「カバンに書いてあるじゃない」
ハーマイオニーの目線を追うと、確かに荷物棚に乗せられたくたびれたカバンには、【R・J・ルーピン】という文字が記されていた。
「この先生、何を教えるんだろう?」
「決まってるじゃない。闇の魔術に対する防衛術よ、空いている教科はそれしかないじゃない」
当然と言われれば当然の答えに、ハリーとロンとクリスは納得して首を縦に振った。しかし、今大事な話はそれではない。ルーピン先生の方をチラリと見ながら、ロンが質問した。