第1章 【The summer vacation ~Ronald~】
クリスから連絡を受けて30分後、ロンは約束通り漏れ鍋へと着ていた。しかしどこにもクリスの姿が見当たらない。まさか自分から約束しておいて遅刻とは……と思っていたところ、店内から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おーい、ロン。ここだ、ここ」
しかし一向にクリスの姿が見当たらない。きょろきょろと店内を見渡すと、きらめく様な長い金髪に青い目の色をした美少女が、ロンに向かって手を振っていた。まさかと思い、ゆっくりと近づいて行くと、少女はニッと笑って見せた。
「ま、まさか君が――」
「おっと、ここで本名を明かされると不味い。まずは外に出よう」
言われるがまま店の外に出ると、眩しい陽の下で少女の髪の毛がキラキラと輝いている。それだけではない。デニムのミニスカートに、明るい色のピッタリとしたお洒落なTシャツ、腕にはリストバンドを付け、若者に人気のスニーカーを履きこなしている姿は、何処からどう見てもマグルの女の子だった。
これが黒髪で、血のような赤い瞳と、いつも真っ黒いローブに身を包んでいクリスるとは全く思えなかった。
「本当にクリスなの?」
「当たり前だろう……それにしてもロンまで気づかないとは――私の変装も上達したものだな」
「どうしたの?その恰好……」
「これか?ゾンゴの悪戯専門店で買った“変身キット”だ。時間が経つと元の姿に戻ってしまうのが難点だが、以外に使えるぞ」
「それだけじゃないよ、その服!」
「ああ、これはダイアゴン横丁の古着屋で買ってきたんだ。どうだ、何処からどう見ても普通のマグルだろう?」
そう言って、クリスはその場でくるっと一回転してみせた。その度に太陽の光を浴びた金髪がキラキラ輝くので、ロンは思わず見とれてしまった。
「さあ、さっそくマグルの町を探検だ!まずは電気屋さんからだ!!」
しかし、中身はクリスのままだったので、ロンは何だか呆れながらも安心してしまった。