第4章 【運命の人】
「しばらくはあの2人にかかわらない方が良いよ。もう30分も同じ事やってるんだから」
「30分も?喧嘩するほど仲がいいとは言うが、あの2人もよくやるよ」
「そう言えば、君の荷物は?」
「ああ、そうだった。トム、グレンジャーの部屋を2人部屋に変更して、荷物も全部運んでおいてくれ」
そう言ってガリオン金貨を数枚カウンターに置くと、店主のトムは愛想笑いをしながら荷物を2階へと運んで行ってくれた。最後に約束通りネサラをかごから出してやると、ネサラは風のようにどこかへ飛び去って行った。改めて店内をぐるりと見渡すと、ウィーズリー氏が新聞を読んでいるのに気づいた。新聞のトップはアズカバンから脱走した、シリウス・ブラックについての記事だった。
ウィーズリー氏は、マグル製品不正使用取締局に勤めており、同じマグル製品愛好家としてクリスが密かに尊敬している人物だ。明日の事もあり、クリスは挨拶をしておくことにした。
「ウィーズリーさん、お久しぶりです」
「やあ、誰かと思ったら君かクリス!話はロンから聞いているよ、明日は君も一緒に我々と出発するんだってね」
「はい。突然で、申し訳ありません」
「いいんだよ、家は大所帯だから1人増えても2人増えても一緒だ。それに、君も友達と一緒の方が心が晴れるだろう?」
「えぇ、はい」
何かが心に引っかかて、一瞬返事をするのが遅れたが、ウィーズリー氏は何とも思っていない様だった。
その後ウィーズリー夫人にも会って、パーシーが主席に選ばれたことを聞いた。逆にフレッドとジョージの2人が監督生になれなかったことに、おかんむりのようだったけれど、フレッドとジョージからすれば、「どうして僕たちが監督生なんて不名誉な地位につかなきゃいけないんだい?」と大真面目に言っていた。
それから少し早い夕食を済ませ、「明日は早いからもう寝なさい」というウィーズリー夫人の言葉に子供たちは追い立てられるように自分の部屋へと戻っていった。
ハーマイオニーと一緒に寝るのは丸々2か月ぶりだった。ハーマイオニーは忘れ物が無いか、カバンの中をもう一度ひっくり返してチェックしていたので、クリスがシャワーから出てきた時、やっと全ての荷物のチェックが終わったところだった。