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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第4章 【運命の人】


 夢の中で、クリスは見覚えのある花畑の中に立っていた。そこは初めてクリスの想像する『ハリー・ポッター』が出てきた花畑だった。
 光る太陽の下、遠くに見えるのは鳶色の髪が明るいブラウンに輝き、顔はよく見えなかったが、優しい笑顔を向けてこちらに向かって何か呼びかけてきてくれている人だった。
 クリスは大きく心臓がときめくのを感じた。どうしても近くに行きたくて、クリスは駆け出した。しかし前の夢のように、なかなか前に進まない。
 もどかしさを胸に秘め、クリスは懸命に走り出した。そしてやっと顔が見えるところに来た時、クリスは微笑む彼の胸に飛び込もうとした。
 その時――

「お嬢さまーーーーー!!!!」

 屋敷しもべの耳をつんざく大きな声とキンキン声によって、クリスは夢から覚めた。まるで2年前の再現とばかりに邪魔をされ、クリスは眉間にしわを寄せた。

「おまえと言う奴は本っ当に洋服が欲しいみたいだな。折角人が良い夢を見ていると言う時にぃ~!」
「わっ、私はお嬢さまの荷物の支度が整ったから、お呼びに来ただけでございます!!」

 両手に拳を握りしめ、こめかみをグリグリと締め上げると、チャンドラーがひぃひぃ言いながら目に涙を浮かべていた。思う存分チャンドラーを痛みつけると、クリスはピーッと甲高い指笛を吹いた。すると森の中から、1匹のワタリガラスが現れ、クリスの腕に止まった。

「チャンドラー、ネサラのかごは?」
「準備万端です。もうお荷物の方は大広間にそろっています」
「良し、それじゃあ私は漏れ鍋で一泊してからそのままホグワーツへ行く。父様にはそう伝えておけ。それからこの本、書庫に返しておけ。分かったな」
「お嬢さま、お言葉ですが……せめて旦那様へはご自身でお伝えなさっては……」
「父様が今更娘の言う事なんて聞くもんか。だったら誰が伝えても一緒だ」

 話しながら、クリスは大広間へと向かった。大広間では暖炉に火が灯り、ゆらゆらと揺れる炎は、まるでクリスを待ち受けているかのようだった。クリスはトランクケースの山から鳥かごを見つけると、その中にネサラを入れてやった。
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