第4章 【運命の人】
漏れ鍋から煙突飛行を使って家に帰ると、クリスは緊張と興奮でどっと疲れが出てきた。屋敷しもべのチャンドラーに一部始終を説明して荷造りを命じると、また長いお説教が始まった。
「お嬢さま、私には分かりかねません。どうしてドラコ様と仲良くなさらず、どこの馬の骨か分からない輩と仲良くなさるんですか?そのうえ小汚い漏れ鍋に一泊だなんて!ご主人様が知ったらどう思うか!!お嬢さまとドラコ様は将来結婚を約束している身。それなのにこの2週間“あのポッター”と仲良くダイアゴン横丁で過ごされるなんて……私はお嬢さまをそんな恥知らずにお育てした覚えはありませんぞ!!」
「あーあー、煩い。たった2週間ハリーとダイアゴン横丁で過ごしただけで何だっていうんだ。夏休み中顔を合わせた回数ならドラコの方が上だぞ」
そう、これでも長い夏休み中、なんやかんや言いながらも、宿題に飽きるとすぐドラコの家に行っては、ドラコをからかって遊んでいたのだ。
ドラコとの仲は後退もなければ進展もない。というより、今更進展なんかあるはずもないと思っているクリスだった。それを周りの大人が何を期待しているのか、何かあるとやれドラコと一緒にいろだろとか、ドラコの家に行けだの煩いのだ。13歳の少女にいったい何を期待しているのか。クリスうんざりしていた。
「とにかく何度も言うけど、私はドラコと結婚する気はない!父様にもそう言っておけ!!」
それだけ言い残すと、クリスは踵を返して部屋を出て行った。そして向かった先は、クリスの一番お気に入りの場所、書庫だった。部屋の内観は円形で、壁一面が本棚になっている。天井は吹き抜けになっていて、まるで本の塔のような所だ。しかもこの部屋の凄いところはそれだけではない。床に大きな魔方陣が描かれていて、探したい本を言えば、たちどころに現れるのだ。
クリスはお気に入りの本を呼び出すと、庭にある東屋に行って、荷造りが終わるまでゆったりと待っていた。
だがあまりにゆったりし過ぎて、クリスはだんだんと眠くなってきてしまい、うとうととしている内に夢の世界へと旅立ってしまった――。