第4章 【運命の人】
返事をしかけた瞬間、ロンの言葉を聞いてクリスは一瞬目を丸くした。本当に魔法省が、車を手配なんてしてくれているのだろうか。しかしロンの自信のありようを見ていると、本当の様な気がしてくる。それをさらに信用させるように、今度はハーマイオニーまでもが前に出た。
「実は私たち、もう漏れ鍋に一泊するって予約を入れてあるんです。ねっ、クリス?」
ハーマイオニーの視線からは「ハイと言いなさい!」という力がこもっていた。マルフォイ夫妻に真向から太刀打ちできないクリスは、ここ友の力を借りるべきだろうと思い、話しを合わせる事にした。
「そうなんです、もうハーマイオニーと相部屋を取ってあるんです。ですから、おじ様たちのお申し出は嬉しいんですが、明日は魔法省の車で駅まで行きたいと思っています」
自分でも、マルフォイ夫妻相手によくぞここまで言い切ったと思った。少し声は震えていたが、及第点をあげても良いと思える芝居だった。
ここまでかたくなに言われては、流石のルシウスも強制できないと思ったのだろう。クリスにジロリと視線を投げつけて、何も言わずに去っていってしまった。その後を追う様に、ナルシッサとドラコが続く。ドラコはクリス達が見えなくなるまで、ずっと振り返りながら睨み続けていた。
マルフォイ一家がいなくなると、クリスは緊張が一気にとけてその場にしゃがみ込んでしまった。
「はあぁぁ、心臓がまだバクバク言ってる……」
「僕もびっくりしたよ。でもこれで、みんな一緒に明日駅まで行ける事になって良かった。でも何処から本当で、何処までが嘘なの?」
「全部本当さ!僕もパパから聞いた時はビックリしたけど、魔法省が特別に車を2台貸してくれるってさ」
「それに、漏れ鍋に泊まるのも本当よ。今朝私の両親が、ここまで荷物と一緒に送ってくれたの!」
飛び跳ねる様に喜ぶハーマイオニー達とは裏腹に、クリスはちょっと心苦しい思いもした。でもこれで明日みんなそろってホグワーツまで行くことが出来る。それには、まず先に家に帰って荷造りをしなければならない。クリスは溶けかかったアイスクリームを急いで食べると、1人漏れ鍋へ戻って家に帰ることになった。