第34章 【新たなる出会い】
「それで、トレローニー先生はなんと?」
「えっと、確か……月が満ちる頃、事が起こる。闇の皇帝の召使が自らの鎖から解き放され、闇の皇帝はその手を借りて再び立ち上がるだろう……とか、なんとか――」
「ふむ――やはりな。ハリーの聞いた予言と変わりない、か」
「先生?本当なんですか?本当なら『タイムターナー』を使った時にピーター・ペディグリューを捕まえておけばよかったのでは?」
そうすれば予言は成立しないし、シリウスの潔白も証明される。しかしダンブルドアは何を考えているのか、長いひげを撫でながらクリスに向かってゆっくり首をふった。
「それは間違いじゃ、クリス。この世の出来事は人の力ではどうしようもない数多くの因果の上に成り立っている。ハリーが助けたピーターの命が、今度はハリーを助ける事になると儂は信じておる。魔法使いが魔法使いの命を救う時、2人の間にはある絆が生まれる――儂が言いたかったのはそれだけじゃ」
「――先生、1つお尋ねしたい事があります」
「フム……言ってごらん」
「ピーター・ペディグリューが言ったんです。自分より、私の方がずっと怪しいって……それを聞いたらシリウスが怒鳴って口を塞いだんです。先生、私は……私に隠されたものはいったい何なんですか?やはり――この血に関係ある事なんですか?」
ダンブルドアは何も言わなかった。ハリー達も口を挟む空気ではないと思ったのか、ずっと黙っている。クリスは度々見る夢の事も話そうかと思った、その時、ダンブルドアが重い口を開いた。
「そこまで分かっておるのなら、儂からいえる事は何もない。強いて言うならクリス、1年生の時にも言うたが『上辺だけを見るのではない、真実はそのずっと奥にある』と言う事じゃ。どう感じ、どう思うかは君次第じゃよ」
それだけ言うと、ダンブルドアは静かに医務室を出ていってしまった。
クリスは悩んだ。自分自身だと思っていた存在が、実はトム・リドルだったなんて――トム・リドルと自分との間には、いったいどんな繋がりが……絆があるのだろう。クリスは左手首をぎゅっと握った。