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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第34章 【新たなる出会い】


「せっ……先生!」

 クリスがルーピン先生の事務所の扉を開けた時、もうすでに荷物の殆どが片付けられていた。ルーピン先生はクリスの姿を見て、少し安心した様子だった。

「良かった、クリス。目が覚めたんだね」
「先生、嘘ですよね?辞任なんて……」
「残念ながら本当だよ。もうこんな事が起こって欲しくないからね」

 ルーピン先生は無理矢理笑って見せた。それは傷ついた時に見せた表情よりクリスの涙を誘った。クリスはルーピン先生に抱きついた。

「お願いです、ルーピン先生!辞めるなんて仰らないでください!!私……私、先生が好きです!大好きです!!先生にもっと色々な事を教えてもらいたいです、だから……だから……」
「クリス――」

 先生は優しくクリスを抱きしめてくれた。暖かくて、胸が切なくなるような温もり、その温もりを感じられるなら、何を投げ捨てても構わないと思えるほどクリスの心を占めた。

「ありがとう、クリス……だけど私は怖いんだ。君の様に、私を慕ってくれる人をまた襲ってしまうんじゃないかとね」
「でもっ『脱狼薬』さえ飲んでいれば安全なんでしょう?私、スネイプ先生にお願いします!また『脱狼薬』を作ってくださるよう――」
「うん、でも……その、何と言うかな――私が狼人間だと皆に言ってしまったのは、他でもないスネイプ先生なんだよ」

 クリスは頭の上に大きな石が落ちてきたようなショックを受けた。なんて事だ、いくらルーピン先生を憎んていたといえ、まさか唯一の頼みの綱だったスネイプが先生の正体を皆にばらすなんて。ルーピン先生は膝を曲げてクリスに目線を合わせた。

「でも、これで良かったと思っている。もしこのまま教師を続けていて、本当に生徒を噛んでしまったらと思うと、とてもじゃないけど耐えられない。それでなくともクリス、君を傷つけてしまった事をとても後悔しているんだから」
「こんな傷、傷のうちに入りません!お願いです、先生……このままお別れなんて嫌です」

 知らず知らずのうちに、大粒の涙が頬を伝い落ちていた。先生はクリスの頬に手を当てると、親指でそっと涙をぬぐった。
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