第34章 【新たなる出会い】
クリスは誰かの話し声を聞き、ゆっくり目を覚ました。どのくらい寝ていたんだろうか。ハリーとロンとハーマイオニーが部屋の隅でコソコソと声を潜めて話している。
起き上がろうとすると、頭が酷く痛く、力が入らなかった。いったいここはどこだろう。確か自分は、人狼と化したルーピン先生から逃れようとして、崖から落ちて、それから――クリスはガバッと身を起こした。
「クリス!?」
「目が覚めたんだんね!?」
クリスが起きたのを見て、ハリー達が喜んだ顔をした。しかし、今はそんな事はどうでも良かった。
「そうだ、ルーピン先生だ、先生はどうなったんだ?それにシリウスは?」
クリスはグッとハリーの肩を掴むと、ハリーはバツの悪そうな顔をした。クリスは辺りを見回した。どうやら医務室の様だ。クリスの声を聞きつけ、マダム・ポンフリーが事務所から飛び出して来た。
「やっと目を覚ましたんですね?さあ、彼方達は治療の邪魔になりますから出ていって下さい!」
「先生!僕達、ここで待っていちゃだめですか?どうしてもクリスに伝えたい事があって……」
「駄目です!それでなくとも彼女は彼方達と違ってディメンターに襲撃されただけでなく、狼男になったルーピン先生からも襲われているんですから」
「私、先生に襲われてなんていません!!」
必死になって訴えるクリスに、マダム・ポンフリーはなだめる様に頷いた。
「分かっています、分かっています。貴女も錯乱の呪文をかけられた1人なんでしょう?シリウス・ブラックが無実だとか、ピーター・ペディグリューが生きていたとか……」
「本当です!それは全部事実です!!」
クリスは力を込めていった。するとマダム・ポンフリーは無理矢理クリスをベッドに押し戻した。
「貴女には十分な静養が必要です。全く、ルーピン先生もルーピン先生です!あれほど校長と約束した『脱狼薬』を飲み忘れて森をさまようなんて!もし生徒に何かあったらどうするつもりだったのか!辞任して当然です!!」
「辞任っ!?」
それを聞くなり、クリスはマダム・ポンフリーを押しのけ、ネグリジェ姿のままスリッパも履かず裸足で医務室を飛び出していった。誰か嘘だって言って欲しい、先生が、先生が自分の所為で辞任するだなんて――。