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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第33章 【月夜の晩】


 クリスは大きな茂みの中へ身を隠した。そして召喚の杖を握ると、神経を研ぎ澄ませた。

(水底に眠る清廉の乙女よ……)

 クリスが詠唱を始めた、その時「グルルル……」と低いうなり声が聞こえた。不味い、もう近づいてきている。クリスが場所を変えようと立ち上がった瞬間、茂みの向こうから大きな鉤爪が現れ、間一髪のところでクリスはそれを避けた。

(クソッ!こんなに距離が詰まっていては召喚術も使えない!!)

 クリスは狼人間となったルーピン先生と対峙した。相手は身も心も狼になり果ててしまった人狼だ。しかし――クリスはまだ本気でルーピン先生と戦う気にはなれなかった。例え狼人間であろうと、クリスの愛情は変わらない。
 だが、どうにかしてこの状況を打破しなければ……ルーピン先生の目がクリスを捕らえ、襲い掛かろうとした、その時、空から弾丸の様に黒い物体がルーピン先生目がけて飛んできた。――ネサラだ!

 ネサラはその翼と鋭い爪と嘴を巧みに使い、先生がクリスを襲うのを阻止している。これはチャンスだ、クリスはまた走ってルーピン先生と距離をとった。召喚術は使えない。となると、どうやって先生を止めれば良い?
 クリスは走りながら考えた。その時、森に転がっている木や岩などに目がいった。これは使えるかもしれない!

「ネサラ!牙に気を付けながら牽制して、ルーピン先生をこっちに引きつけるんだ!!」

 ネサラは返事をするように一声鳴くと、飛びながら鋭い爪と嘴で上手い事先生の攻撃を避けている。クリスは走って走って、とにかく走りまくった。どこかにあるはずだ、探しているモノが……クリスは走りながら周囲に目を向けた。その時、大きな岩を見付けた――これだ!!

「ネサラ!このまま先生と私を一直線上にさせるんだ!」

 クリスは崖っぷちに立つと、逃げるのを止め、先生と対峙した。チャンスは1度きり、これで失敗したら自分も狼人間になる。だがやるしかない。
 先生はクリスと目を合わせると、一瞬間をおいた。
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