第1章 【The summer vacation ~Ronald~】
「どうしたんだよクリス。っていうか、よく家が分かったね」
「有名なウィーズリー家だ、ちょっと調べたらすぐに分かった」
「それで?今日はどんな用事?」
「そろそろ読書にも飽きてな。暇だったらロンと一緒にマグルの町へ遊びに出かけようと思って誘いに来たんだ」
「へえ、ロンと一緒に、ねえ……」
双子はなにやらニヤニヤ笑いながら、ロンの脇をつついた。そしてグッと顔を寄せると、クリスに背を向けて、ひそひそと小さな声で囁いた。
「やったじゃないか、ロニー。初めてのデートじゃないか」
「で、ででででデート!?」
「バカッ!声が大きい!!いいか?これはお前なんかには一生に一度あるかないかのチャンスなんだ。これを放っておいたら、もう二度と女の子から声を掛けられるなんてことは無いぜ」
「でも、まだジャガイモの皮むきが――」
「何言ってんだよ、それ位僕たちに任せて、お前はバッチリデートを決めてこい!!」
「おーい、何やってるんだ?行くのか?行かないのか?」
待ちくたびれたようなクリスの問いに、フレッドとジョージがロンをぐぐいっと前に突き出して答えた。
「もちろん行くってよ」
「このボンクラで良かったら、いつでもどこでも連れて行ってくれ」
「そうか、それなら良かった。じゃあ30分後、漏れ鍋で待ち合わせしよう」
それだけ言うと、暖炉の中に浮かんでいたクリスがシュッと消えてしまった。
「よしっ、ロン!お前は今すぐシャワーを浴びてこい!」
何を考えているのか、突然フレッドが叫んだ。確かに待ち合わせまで時間はあるが、マグルの町まで遊びに行くのに、そんな事までさせられるなんて思わなかった。
「えっ?シャワー?良いよこのままで」
「何言ってるんだ!クィディッチして汗かいたままデートに出かける気か?汗臭い男は嫌われるぞ」
「それからその服!その伸びきったTシャツも着替えてこい」
双子はロンをおいて、もうやる気満々だ。何がそんなに面白いのか……仕方なく言われた通りシャワーを浴び、さあ着替えようとした時――双子にあーだこーだ言われた所為か――ついついお気に入りのチャドリー・キャノンズのタンクトップに着替えてしまうロンであった。