第30章 【在りし日の思い出】
それからどうなったのか、クリスは話しの続きが気になって仕方なかった。もうルーピン先生は傷ついた表情はしていなかった。むしろ昔を思い出し、穏やかな、それでいてどこか懐かしそうな顔をしていた。
「3人は私の正体を知っても、私を差別するどころか、逆に私の為にある事をしてくれた。それは正しく私にとって救いの手だった。そう、3人とも私の為に『アニメ―ガス』になり、私と一緒にいてくれた。それは正に人生最高の時だった」
「3人って事は、僕の父さんも?」
ハリーが興奮したように聞いた。誰も語らなかった亡き父の秘密を知って、興奮するなと言う方が無理だった。ルーピン先生はいつもの穏やかな笑顔をハリーに向けた。
「そうだよ、ハリー。君のお父さんも、シリウスも学年でもトップクラスの頭の良さだった。それでも『アニメ―ガス』になる方法を知るのに3年もかかった。それほど難しい術なんだ。ピーターだけはジェームズやシリウスに手伝ってもらわなければならなかった。そして5年生になって、やっと3人はそれぞれ意のままに特定の動物に変身できるようになった」
「でも、動物に変身したからといって、この屋敷で何をしていたの?」
そうだ、動物になったところで、まさかおとぎ話し宜しくお茶会でも開いているわけではあるまい。
ハーマイオニーが当然の疑問を投げかけると、ルーピン先生は困った様な、バツの悪い顔をした。
「うむ――実に言いにくい話しだが……この屋敷内だけではなかったんだ。つまり、3人が変身できるようになると、ジェームズの『透明マント』に隠れて月に1度こっそり城を抜け出し、変身して『叫びの屋敷』から抜け出して、校庭や村を歩き回る様になった」
「それじゃあ、もしかして『忍びの地図』は――」
「そう、4人で校庭やホグズミードを隅々まで調べ、他の誰でもない私たちが『忍びの地図』を作ったんだ。そしてそれぞれのニックネームでサインをした。私は『ムーニー』、シリウスは『パッドフット』、ピーターは『ワームテール』、ジェームズは『プロングズ』」
「でも危険すぎるわ!暗い夜の中、校庭や町中を歩き回っていたなんて!もし狼人間が皆をまいて誰かに襲い掛かったらどうするつもりだったの!?」