第29章 【ルーピン先生の裏切り】
ルーピン先生はクリスの召喚の杖も含め、持っていた4人の杖をそれぞれ持ち主に返した。そして自分の杖をベルトに挟んで両手を開いて見せた。
「ほら、これで私は丸腰だ。君たちはいつでも私を攻撃できる。なんなら私の杖を渡したって良い。それで話をさせてくれるのなら」
「一応、先生の杖も渡してください」
ハリーが用心深く言った。目をギラつかせ、まだ先生を疑っているのが手に取るように分かる。クリスは心が痛んだ。
あんなに皆から信頼されてたのに、今はブラックの手引きをしたと思われている。しかしそれも仕方のない事なのかもしれない。あのブラックと、あんなに親しそうにしていたのでは――。
ルーピン先生は、言われた通り自分の杖をハリーに投げてよこした。これで先生は完全に攻撃する術を失っている。ハリーは先生の杖を握りしめながら訊ねた。
「ブラックを手引きしたんじゃないんだったら、どうしてこいつがここに居るって分かったんだ?」
「簡単だよ、『忍びの地図』だ。事務所で君たちの事を調べようと眺めていたんだ」
「どうして僕達の事を?」
「それは、君達ならヒッポグリフの処刑前にハグリッドの元を訪れると思ったからだ。実際そうだったね?」
「先生は、何故地図の使い方を知っているんですか?」
「もちろん知っているとも。なにせ私もこれを描いた1人だからね。私のまたの名は『ムーニー』親友たちの間ではそう呼ばれていたよ」
クリスの身体に衝撃が走った。しかし先生の言葉を信じれは、全てに納得がいく。
「それじゃあ、先生が『悪戯仕掛人』?」
「ああそうだよ。あの頃は怖いもの知らずで、何でもやった。ジェームズの『透明マント』を使って色々な所を冒険したものだ。そう、『透明マント』を使っていても地図には名前が現れるんだ。それは知らなかった様だね、ハリー?」
ハリーは何も言わず、コクリと頷いた。ルーピン先生はさらに話しを続けた。