第29章 【ルーピン先生の裏切り】
「君達が大広間近くの小部屋から、真っ直ぐハグリッドの小屋の方に行くのが見えた。それから数十分後、君達はある人物と一緒にハグリッドの小屋から城に戻ろうとしていた」
「そんな筈ない、僕達4人だけだった」
「いや、もう一人いたんだよ。私は目を疑った。だって本来ならそんな筈はないからね。でも、地図は嘘はつかない。現にその後直ぐ、シリウス・ブラックと書かれた点が見え、君たちの中から2人を連れて『暴れ柳』に引きずり込むのを見たんだ」
「いや、1人だ!僕だけだった!!」
ロンが激しく反論した。クリスはルーピン先生の言葉を信じたかったが、シリウス・ブラックがロンだけを連れて行ったのはその場に居たクリス達が一番よく分かっている。しかしルーピン先生は首を振った。
「それがそうじゃなかったんだ。それを証明するために、ロン、君のネズミを見せて貰えないか?」
「どうして?スキャバーズに何の用なんだよ」
「どうしても確かめたい事があるんだ、頼む、そのネズミをもっとよく見せてほしい」
ルーピン先生が熱のこもった瞳でロンを見た。ロンはどうしようか迷っていたが、やがて胸のポケットに手を入れて、暴れ狂うスキャバーズを取り出した。
スキャバーズはその手から逃れようとキーキー喚きながら身をよじった。ロンはスキャバーズの尻尾を握ってぶら下げた。それに呼応する様に、突然クルックシャンクスが毛を逆立て「フーッ!」と威嚇した。
「何だよ、スキャバーズにいったい何の関係があるんだよ」
「いや、そいつの名前はスキャバーズなんかじゃない」
それまで壁に寄りかかっていたブラックがロンに近づき、自分ももっと間近でネズミを見ようと身を乗り出した。先生はスキャバーズから目を離さず、静かに、だがハッキリとこう言った。
「そいつの名前は『ワームテール』本名を――ピーター・ペディグリューと言う」