第29章 【ルーピン先生の裏切り】
ルーピン先生の制止も聞かず、ハーマイオニーは叫んだ。突然突きつけられた現実に、クリスはもちろん、ハリーも、ロンも思考がついていっていない様だった。その証拠に、誰も言葉を発することが出来ずにいた。ハーマイオニーはさらに続けた。
「私、私……先生の為に誰にも言わなかったのに……それなのに先生はずっと私たちをだまし続けていたんだわ。ハリーを殺すために、ブラックを学校に引き入れたのも先生なんだわ!!」
「うそ……ですよね?ルーピン先生……?」
クリスが弱々しい声で訊ねた。ルーピン先生は唇をキュッと噛み、何かに耐えているようだった。が、やがてフッと自嘲気味に笑った。
「君らしくないね、ハーマイオニー。3問中1問しかあっていない。私はハリーを殺そうなんてこれっぽっちも思っていないし、勿論シリウスを学校に引き入れてもいない」
短い沈黙の後、ルーピン先生は自嘲ぎみに僅かに微笑み、更なる言葉をつむいだ。
「だが、私が狼男だと言うのは否定しない」
先生の表情は寂しそうだった。その顔を見て、クリスは聞いてはいけない事を聞いてしまったんだと思った。先生を傷つけたくなんてなかった。他の――誰よりも大好きな先生を。
例え先生が狼人間であったとしても、自分だけは先生の見方でいたかった。しかし、そう思っているのはクリスだけの様だった。
「せ……先生……」
「駄目だ、クリス近寄っちゃ!」
先生に近寄ろうとして矢先、ロンがクリスの肩をグッと掴んだ。その拍子に痛みがはしったのか、ロンは小さく悲鳴を上げた。それを聞いたルーピン先生が、咄嗟にロンに近づこうとした。
「僕らに近寄るな!この狼男め!!」
ロンが叫んだ。その瞬間、先生が傷ついたような顔をしたのをクリスは見逃さなかった。ロンは痛みに耐え切れず、よろよろとベッドに倒れ込んだ。しかしそんなロンにクリスは同情できなかった。
「ロン!先生になんて事を!!」
「騙されちゃ駄目よ、クリス!狼人間がどれほど危険な存在か貴女だって知っているでしょう!?」