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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第29章 【ルーピン先生の裏切り】


「シリウス、あいつはどこだ!?答えてくれ!」

 クリスの眼はルーピン先生に釘づけになっていた。ルーピン先生はいったい何を言っているのだろう。あいつとはいったい誰の事だろうか。
 ブラックは必死になっているルーピン先生を見ると、黙ったままゆっくりとハリーの後ろに目をやり、クリスの隣にいる、ロンを指さした。
 ロンは渦中に巻き込まれ、青くなった顔をさらに青くさせた。しかし、ルーピン先生はそんなことお構いなしだった。

「しかし、それならなぜ今まで正体を現さなかったんだ?いや、待ってくれ、もしかしたら――」

 ルーピン先生はそこで言葉を切った。先生は頭に手をやり深く考え込むと、何か思いついたように目を大きく見開いていた。

「まさかあいつがそうだったのか?私たちの知らない内に、シリウス……君たちは入れ替わっていたのか?」

 ブラックは何も言わなかった。ただ真っ直ぐルーピン先生を見つめていた。そして――信じられない事が起こった。
 ルーピン先生は杖を下ろし、ゆっくりとブラックに近づくとその手を取って起き上がるのを手伝い、まるで長年会っていなかった親友との再会を喜ぶように強く抱き合った。

 クリスは混乱で目の前で起こっている事が現実とは思えなかった。いや、思いたくなかった。あの優しい先生が、ブラックとグルだったなんて。

「そんな、まさか……嘘だって言って下さい、ルーピン先生!!」

 クリスの声は涙声に近かった。なにか弁解があるなら言って欲しい、どうしてあんなに強くて、優しくて、誰よりも生徒思いだった先生が、あの大量殺人鬼のシリウス・ブラックと親しい仲だったなんて。クリスの顔を見て、ルーピン先生は落ち込んだような表情を見せた。

「……クリス、いいから私の話しを聞いてくれ」
「駄目よ!クリス!!先生の話しに耳を貸しちゃ駄目!!」

 ルーピン先生の言葉を遮る様に、ハーマイオニーが叫んだ。ハーマイオニーは鋭い目つきでルーピン先生を睨んでいた。

「先生は……先生は……」
「ハーマイオニー、頼む、私にも話をさせてくれ」
「駄目よ、信用できないわ。だって、だって先生は――」
「ハーマイオニー!!」
「先生は――狼男なのよっ!!!」
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