第29章 【ルーピン先生の裏切り】
「素晴らしい友情だ、良い友を持ったなハリー」
「ッ!――お前に何が分かる!父さんと母さんを裏切ったお前に!!」
ハリーは怒りに任せがむしゃらにブラックに飛びかかった。一瞬の隙を突き、ブラックは杖を上げ損ねた。ハリーはブラックの右腕に掴みかかると、腕を捻りあげ、思わずブラックは杖を取り落した。
――今だ!クリスは2人が杖を取ろうともがいている間に、勢いよく杖を部屋の隅まで蹴り飛ばした。それをハーマイオニーが素早く取り上げた。
ハリーは杖がなくなった今、ブラックの体の上に飛び乗り、手あたり次第ブラックを殴りつけた。
しかしブラックもやられっぱなしでは無かった。長細い腕でハリーの顔面を押さえつけると、身長差にものを言わせ形勢逆転を図った。しかしハリーはどんなに抵抗されても、ブラックに襲い掛かって離れようとしなかった。
するとそこに、突然クルックシャンクスが割り込んできて、ブラックを守る様に胸の上に乗り、ハリーに向かって威嚇してきた。
「そこを退け!!」
ハリーは叫んだが、クルックシャンクスはますます毛を逆立て、その小さい体でハリーに挑もうと身を低くした。ハリーがクルックシャンクスを払いのけようと腕を振ると、クルックシャンクスはハリーの腕に噛みついた。
「ハリー!今助けるぞ!!」
クリスはハーマイオニーの手から、誰のでもいい、杖を一本ひったくるとクルックシャンクスに向けて閃光を放った。閃光を避けようとして、クルックシャンクスはハリーの腕から離れた。
それからクリスは持っていた杖をハリーに向かって投げた。ハリーはその杖を受け取ると、床に転がっているブラックに向けて付きつけた。
「これで終わりだ、シリウス・ブラック」
「私を殺すつもりか?ハリー……」
ハリーは問いに困ったように、何も言わなかった。2人とも息も絶え絶え、体中に怪我をして見つめ合った。静寂の中、ハリーはまるで自分に言い聞かす様に呟いた。
「……お前は僕の父さんと母さんを殺した」