第26章 【クィディッチ優勝杯】
だがそんなハリー以上に気を張り詰めている男がいた。そう、キャプテンのオリバー・ウッドである。ウッドは時計が9時を指した瞬間、突然立ち上がり全体に響くほどの大声で叫んだ。
「選手、全員寝ろ!!!」
その言葉を合図に、グリフィンドール選手たちはみんな寝室への階段を上っていった。
翌朝、クリスはハーマイオニーに朝早くから起こされた。昨夜遅くまでヒッポグリフに関しての本を読んでいたクリスは、眠くて眠くて仕方なかった。
「ハーマイオニー。まだ、早すぎる……」
「そんな事ないわ!ハリー達はもう起きているはずよ、早く行って応援してあげなくっちゃ!」
抵抗もむなしく、無理矢理起こされたクリスは半分眠ったまま身支度を済ませると、ハーマイオニーに引っ張られて大広間に足を踏み入れた。だがまだハリー達は来ていなかったらしい。クリスはいつも通り眠りながら紅茶を注いだ。
それから20分くらい経っただろうか、突然割れる様な拍手の音に起こされ、クリスは辺りを見回した。見るとグリフィンドール選手が大広間にそろって現れたところだった。
ハリーが大広間に現れると、グリフィンドール生だけでなく、ハッフルパフやレイブンクローのテーブルからも拍手が巻き起こった。もし今日の試合でグリフィンドールが勝てば、8年連続スリザリンがクディッチ優勝杯を掴むのを阻止できる。そう思って皆グリフィンドールを応援しているのだ。クディッチ嫌いのクリスにしてみれば、こんなゲームにこれほど熱くなれる皆が信じられなかった。
「ハリー、ここよ、ここ!」
「こっちに来いよハリー!」
ハーマイオニーとロンがハリーを呼んだ。ハリーは試合前の最後の食事を親友たちと過ごそうと、ウッドに一言つげてからロンの隣に座った。
「ハリー、今日は絶対に勝ってね。あのマルフォイなんかに負けたら、私許さないから」
「うん、きっと大丈夫……だと思う」
ハリーは昨夜とは違いノイローゼ気味ではなかったが、何故か元気が無かった。しかしスリザリン以外のテーブルから沢山の声援を貰って、少しづつだが元気をもらったみたいだ。
ウッドはハリーの後ろに来て「ハリー、分かっているな。50点以上差がひらいてからスニッチを掴むんだぞ」と言って、ハリーの皿にスクランブルエッグとソーセージを山の様に乗せた。