第3章 【Fast contact】
しかし、残り1週間を目の前にして、遂にドラコから手紙が来た。3年生用の学用品を、一緒に買いに行こうというお誘いの手紙だった。ドラコだけならあっさり断れるが、その後ろにはクリスが苦手としているマルフォイ氏が控えているのは火を見るよりも明らかだった。
しかも数か月前、ハリーによって屋敷しもべのドビーに靴下をやる羽目になり、マルフォイ氏のご機嫌は右肩下がりだった。そんなところに、1週間ハリーと一緒になって宿題をやっていたと知ったら、いったいどんな嫌味を言われるか……想像しただけで心臓が止まりそうだった。
さらに不幸はそれだけではない。ロンやハーマイオニーがダイアゴン横丁に来る日と、ドラコが学用品を買いに来る日が一緒になっていた。鉢合わせになったら不味いことになるのは去年経験済みだ。クリスは頭を悩ませた。
「なあ、ハリー。何かいい方法はないか?」
「う~ん……そうだ!もう先に買った事にしちゃえば良いんじゃないかな。そうすれば一緒に買い物に行く必要が無くなる」
「そうか、その手があったか!こんな簡単なことに気づかなかったなんて!――あぁ、でも……そうしたら皆とも買い物に行けないな……」
「そっか……それじゃあ、変装して行くって言うのはどうかな?」
「駄目だ、きっと声でバレる」
伊達に13年間、一緒に過ごしてきたわけではない。クリスにとってみれば、マルフォイ家は第2の家族とも言える。そんな人達を、少々見た目をごまかしたくらいで騙せるわけがない。それにバレた後のお仕置きを考えると怖くてとても出来ない。
「私も、普通のマグルとして産まれたかったな……」
落ち込むクリスに、ハリーは突然立ち上がってクリスの手を握った。
「それじゃあ、今日は僕がクリスの買い物に一日中付き合うよ!」
「えっ?い、いいよ。それに父様がいないとお金もおろせないし……」
「お金の事は気にしないで、僕が持ってるから。今度返してくれればいいよ!!ねっ、そうしよう!」
ハリーの目はキラキラと輝いていた。ハリーから見れば、窮屈な生活をしているクリスに同情する気持ちと、どうにかクリスにも楽しい夏休みを過ごしてほしいという気持ちもあったのだろう。ハリーは半ば強引にクリスを立たせると、手を握ったままダイアゴン横丁を駆け抜けた。