第3章 【Fast contact】
「チャンドラー、朝食の用意をしろ。私はその間シャワーを浴びてくるから。その後ヘドウィグと一緒に漏れ鍋に行ってくる」
「漏れ鍋へ?新学期の用意をするにはまだ少し早いのでは?」
「買い物じゃない、お前の“大好き”なハリー・ポッターに会いに行ってくるんだ」
チャンドラーは一瞬大きく目を見開いた後、恨みがましい目つきでクリスを見たが、クリスはその視線を無視して着替えを持ってシャワールームに向かった。眠気を熱いシャワーで覚ますと、クリスは朝食を終えてから煙突飛行粉を使って漏れ鍋へ向かった。
漏れ鍋に着くと、クリスはまず店の中にハリーがいないか探した。が、ハリーの姿はどこにも無かった。店主のトムに聞いてみると、ハリーは朝食を済ませると、いつもダイアゴン横丁に遊びに行くらしかった。仕方なく、クリスもダイアゴン横丁に出てハリーを探すことにした。
だがヘドウィグを連れてきたおかげで、ハリーはあっさりと見つかった。ダイアゴン横丁を歩いていると、急にヘドウィグが肩から飛び去り、まるで道案内でもするかのようにくねくねと曲がった路地を飛んで行った。そしてカフェ・テラスで、きょろきょろと辺りを見回しているくしゃくしゃの黒髪の男の子の肩に止まった。
「ハリー!」
「え?クリスッ!?」
約2か月ぶりの再会に、2人はお互い固く手を握り合った。笑顔のクリスに比べ、ハリーは驚きを隠せない様子だった。
「凄いねクリス、今朝ヘドウィグに手紙を持たせたばかりなのに」
「凄いのはヘドウィグだ。ダイアゴン横丁に来るなり、スーッとハリーの元まで案内してくれた。それよりもハリー、どうして2週間も漏れ鍋で過ごすことになったんだ?」
「ああ、それなんだけどね」
ハリーは何か面白いモノを思い出した様に密かに「ふふふ」と笑うと、声をひそめてこっそりと教えてくれた。
「親戚のマージおばさんから嫌味を言われて、僕、キレて魔法で風船みたいに膨らませちゃったんだよ。てっきり退校処分になると思っていたんだけれど、漏れ鍋で魔法省大臣が待っていて、退校処分は無し。おまけに漏れ鍋で2週間も好きに過ごせることになったんだ」
「良かったじゃないか!」
「う~ん……だけどその所為で、ホグズミードに行く許可証は手に入らなかったけどね……」