第3章 【Fast contact】
それから数日後、クリスが例の黒犬に襲われてから何日かたったある日の事だった。
いつも通り12時過ぎても起きてこないクリスに業を煮やし、チャンドラーがクリスの部屋の戸を何度も叩いた。しかし低血圧で目覚めの悪いクリスは、ちょっとやそっとでは起きてこない。そこでチャンドラーは魔法で部屋の鍵を開けると、特有のキンキン声で説教を始めた。
「まったく、お嬢さま!!一体何時まで寝ているおつもりですか?いくら夏休みと言えどこんなにだらけてしまっては体に毒ですぞ!ご主人様はご幼少の頃より朝早く起きて机に向かい勉強をし、ホグワーツでも優秀な成績でご卒業されたと言うのに!!お嬢さまは机に向かっていると思えば、何の役にも立たない本ばかり読んで――聞いているのですか!?お嬢さま!!」
「……聞いている、聞いているからその金切り声をやめてくれないか……」
クリスはベッドの中からもごもごと返事を返した。そしてうーんと伸びをすると、重たい瞼を持ちあげ上体を起こした。ふとすればまた夢の世界へ行きそうなクリスに向かって、チャンドラーが大声を張り上げた。
「お嬢さまーーー!!!!」
「分かった、分かった……起きる、起きるから」
そう言ってベッドから起き上がろうとした時、窓ガラスを2、3回叩く音が聞こえた。その音に導かれるようにして目をやると、ハリーのフクロウのヘドウィグが嘴に手紙を咥えていた。窓を開けてやると、スーッとクリスの上に飛んできて、ポトリと手紙を落とした。
「ハリーからだ、何だろう?」
眠い目をこすりながら手紙を広げると、そこにはハリーからのメッセージが書かれていた。
【Dear クリス】
やあクリス、元気にしてる?誕生日ケーキとメッセージカードを送ってくれてありがとう。僕は色々あって、夏休み残りの2週間を漏れ鍋で過ごすことになったよ。そこで最後の週に、皆で新学期の買い物をしようという話しになって、良かったら君も来ないかい?マルフォイ一家に邪魔されないことを祈っているよ。
【by ハリー】
手紙には“色々あって”と書いてあるが、いったい何があったんだろう。百聞は一見に如かず、気になったクリスは直接ハリーに会って聞こうと思い、ベッドから勢いよく跳ね起きた。