第23章 【胸の棘】
「いいえ、心配なんて……私の独り善がりよ。本当は、ハリーもロンも鬱陶しいって思っているに決まっているわ」
「うーん、ロンはともかく、ハリーはもう仲直りしたいと思っていると思うぞ。今度皆でちゃんと話そう、な?そうすれば、わだかまりも無くなるさ」
ハーマイオニーは泣きながらだったが、コクンと頷いた。
それからハーマイオニーが泣き止むのを待って、2人そろって空き教室を出た。もう消灯時間は過ぎており、談話室に行くまでクリスは足音を立てず、周りの気配を窺いながら慎重に進んだ。そして無事『太った婦人』の肖像画まで辿り着くと、眠っていた『太った婦人』を起こし、談話室に入った。談話室では、宿題をしていたハリーとロンが2人を待っていた。
「やあ、クリス!ハーマイオニー!」
ハリーが近づいてきて、2人の仲が戻った事に笑顔が隠しきれない様子だった。ニコニコ笑ってハーマイオニーとクリスを同じテーブルに座らせると、ハリーは早速分からない宿題についてハーマイオニーに問いかけた。
クリスは横目でロンを見た。ロンはまだハーマイオニーを許していない様子で、勝手にハリーがハーマイオニーを座らせた事を怒っている様だった。が、本当の事件はここから始まった。
クリスが不意に掲示板を見ると、新しいお知らせが張ってあった。週末のホグズミード行きについてだ。もしや……と思って、クリスは声を潜めてロンに訊ねた。
「まさかとは思うが……ロン、ハリーはホグズミードに行かないよな?」
「なんで?行くに決まってるだろ?」
「ばっ!馬鹿かお前!?この間は折角のクリスマスだったから大目に見たけど、本来ならハリーは行っちゃいけないんだぞ?」
思わず声が出てしまい、クリスはパッと口を塞いだ。大丈夫、回りの生徒は誰も聞いていない。そう、目の前にいるハーマイオニー以外は――。
「クリス……本当なの?ハリーが“また”ホグズミードに行くなんて……」
ハーマイオニーの声は震えていた。目を見開き、怒鳴りたいのを必死に抑えている。今にも叫ばぬその形相に、情けない話、クリスは何て言って良いか分からなかった。