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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第3章 【Fast contact】


 しかしよく考えれば、“あの”ハリー・ポッターにメッセージカードを書ける様な仲になった事は、奇跡的といっても良かった。
 実はハリー・ポッターと言えば、魔法界ではその名を知らない人はいないほどの有名人であり、魔法界を暗黒と混沌の世界に塗りかえ恐れられた『名前を言ってはいけないあの人』を打ち破った張本人である。

 その所為で、クリスは入学前まで、ハリー・ポッターに極度の憧れを持っていた。いや、初恋と言っても良い位だ。物心ついた時から、二言目には「ハリー・ポッター」だった。
 悲しい時や、落ち込んだ時は、ハリー・ポッターの名前を呼んで元気をもらっていたくらいだ。それがふたを開けて見ればビックリ、自分の思い描いていた人とかけ離れた、どこにでもいるような普通の少年だったのだ。その時のクリスの落ち込みようは半端ではなかった。しかしひょんな事から仲良くなって、同じ寮になって、色んな体験をして、こうしてメッセージカードを書くまで仲良くなったのである。

(そうか、ありのままを書けばいいのか)

 そう、いくら有名でも、ハリー自身は一般人に過ぎない。クリスはこれまでの事を思い出しながら、ハリーへの素直な気持ちをしたためた。
 ハリーと出会えて嬉しかったこと、面白かった思い出、苦労した事や2人で『例のあの人』に2度も立ち向かった時の事。それらを書き終えると、丁度チャンドラーが部屋の扉を叩いた。

「お待たせいたしました、お嬢さま。ケーキが出来上がりましたよ」
「そうか。変な小細工は――」
「一切しておりません。このチャンドラー、命に誓って申し上げます!!」

 確かに箱の中をのぞいてみると、そこには美味しそうなショートケーキが出来上がっていた。クリスはそれを書いたばかりのメッセージカードと一緒にして、使い魔のネサラの足に括りつけた。

「いいか?ネサラ、ケーキが崩れないように運ぶんだぞ。あと、0時きっかりにハリーの元に届けるんだ。良いな?」

 クリスがそう言うと、ネサラは「了解した」と言わんばかりに一声鳴き、大空に向かって飛んで行った。
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