第22章 【愚か者】
「あいつが謝ってきたらこっちだって考えなくはないよ。でもハーマイオニーの事だ、自分が悪いって絶対認めないだろうし、未だにスキャバーズは男子寮のベッドの下でぐーすか寝てるって思ってるんだ」
「私も、あの知ったかぶりさえ治れば許さなくもないな」
独りハーマイオニーのいなくなった談話室では、午前1時まで宴会が続いた。みんな疲れてそれぞれの寝室に戻ると、着替えてすぐベッドに入った。
――それから何時間たっただろう。突然大声がして、クリスは目を覚ました。声は男子寮から聞こえてきたらしい。クリスはガウンを羽織るとパーバティ達と一緒に談話室まで下りていった。談話室では数人が騒いでいる声が聞こえる。まだパーティの続きかと、クリスは飽き飽きしてきた。
「みんなっ、寮にもどるだ!」
パーシーが、主席バッジをパジャマの胸に着けながら下りてきた。面倒なことにならない内に女子寮に戻ろうとした、その時、ロンが驚くべきセリフを言った。
「パース、シリウス・ブラックだ!僕に襲い掛かってきた!!」
皆耳を疑った。談話室は一瞬静寂で包まれ、沈黙を破ったのはパーシーだった。
「そんな訳ないだろ、ロン。はしゃぎ過ぎて疲れて変な夢でも……」
「夢じゃない、本当なんだ!!」
「何ですかいったい!騒々しい!!」
その時、マクゴナガル先生がやって来た。タータンチェックの部屋着に、いつもの三角帽子の代わりにヘアネットを付けてのご登場だ。
「グリイフィンドールが勝ったのは私も非常に嬉しいですが、これははしゃぎ過ぎです!パーシー、主席の彼方がもっとしっかりしなければ!」
「先生、誤解です!僕はこんな事許可していません」
「では何の騒ぎですかこれは!」
「先生!ブラックです!シリウス・ブラックがナイフを持って僕のベッドに襲い掛かって来たんです!!」
ロンは興奮冷めやらぬ様子で訴えた。ロンの主張だけ聞いていると、本当にシリウス・ブラックが居たような気さえする。マクゴナガル先生は呆れた声で言った。
「そんな馬鹿な、どうやって肖像画の穴を通ったと言うのです?」
「それは肖像画自体に聞いてください!!」
マクゴナガル先生は訝しがりながらも、もう1度肖像画の前に立ち、『カドガン卿』の肖像画に訊ねた。皆それを耳をそばだてて聞いていた。