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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第3章 【Fast contact】


「ええ、お嬢さま。たった今焼けたところでございますよ――全く、なんで私が『汚れた血』なんかにケーキを焼かなくちゃいけな――痛っ!!」
「お前、今なんて言った!?私には『汚れた血』と聞こえたが?」

 クリスは怒ってチャンドラーの足を思いっきり蹴とばした。『汚れた血』とは『純血主義』という、マグルの血が入っていない『純血者』だけが尊いと思い込んでいる連中が、マグルの血が入っている魔法使いに対して使う言葉なのだが、クリスはそれが大っ嫌いだった。
 しかし何の運命か、クリスの生まれたグレイン家は『純血主義』を最初に唱え始めたサラザール・スリザリンの末裔とも言われている家で、過去1000年に続いて純血を守り続けてきた紛れもない『純血主義』の家系だった。
しかしクリスは逆に、マグル大好きマグル製品愛好家に育ってしまい、周囲の期待を思いっきり裏切っているのであった。

「今度同じことを言ってみろ、次は父様に代わって『洋服』をくれてやるぞ」

 クリスが独特の赤い瞳で鋭く睨むと、チャンドラーはブチブチと文句を言いながら焼きあがったケーキにデコレーションをし始めた。

「分かりましたよ、大人しくやれば良いんでしょう。……全くお嬢さまは一体何をお考えになっておいでなのか。グレイン家にお生まれになりながら、友達になったのマグル生まれや、マグル支持者の者ばかり。そればかりか許婚のドラコ・マルフォイ様とは喧嘩ばかりなさって……これでは1000年続いたサラザール・スリザリン様の血を汚してしまいま――痛いいいっ!」
「お前はまだ分かってないらしいな、チャンドラー」

 長いお説教を遮る様に、クリスはチャンドラーの大きな耳を掴んで、耳が千切れそうになるまで、真横に力いっぱい引っ張って持ち上げた。これでも本当に『洋服』をあげなかっただけ優しい方だ、とクリスは思った。

「いいか?そのケーキにちょっとでも仕掛けをしてみろ。その時は生まれてきたことを後悔させてやる」

 そう言い残し、クリスはまた自分の部屋へ戻って行った。そして机に向かい、またハリーへのメッセージカードとにらめっこを始めた。
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