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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第3章 【Fast contact】


 イギリスのハイランド地方に、『サンクチュアリの森』と呼ばれる森がある。しかしその名前とは裏腹に、森は鬱蒼と茂り、森の近くに住む村人たちは、気味悪がって決して森に近づこうとしなかった。村の子供たちは怒られる度、「サンクチュアリの森に連れて行くわよ!」等と言って叱られてきたのだ。
 そこまで言われるのも当然、実はそこには、紛れもなく「魔法使いの一家」が暮らしていたのだから――。

 その魔法使いの一家のうちの一人、クリス・グレインは机に向かって親友のハリー・ポッターへ誕生日のメッセジカードを書いている途中だった。本当は終業式に貰った『でんわばんごう』で直接ハリーへお誕生日おめでとうと言いたかったのだが、同じく親友のロン・ウィーズリーが、運悪くハリーを煩わしく思っている叔父に直接――しかも大声で――ハリーの『学校の友達』だと告げてしまったのであった。

 どうやらハリーの家では、『ホグワーツ魔法学校』の事は禁句とされており、ロンの試みは大失敗に終わってしまったと言うわけらしい。と、言う事を同じマグル――魔法族以外――出身の親友、ハーマイオニー・グレンジャーから手紙で知らされた。そこでプランを変更し、誕生日の0時きっかりに、ハリーにメッセージカートとプレゼントを渡そうと考えたのである。

「う~ん、なんて書こうか……お誕生日おめでとうハリー、良いお年を――じゃ短すぎるしなあ。かと言ってこの夏休みにあった事なんて書いてもなあ」

 うーんと、うなりながら文章を考えていると、階下から美味しそうな匂いが漂ってきた。クリスは思わず手を止めて厨房の様子を見に行った。

「良い匂いがするな、チャンドラー。もうケーキは焼けたのか?」

 チャンドラーと言うのは、この家に住む屋敷しもべの名前だ。顔は皺だらけで目はテニスボールのように大きく、背はクリスの半分くらいしかない。服は着ておらず、代わりに麻袋に首と手を通す穴をあけて洋服の代わりにしている。
そう、屋敷しもべは忠誠の証として、洋服を着てはいけない決まりになっているのである。もし靴下の片方でもあげようものなら、その場でお役目ごめんとなるのである。
 クリスが厨房に顔を出すと、チャンドラーは怒ったような口調で答えた。
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