第21章 【消えたスキャバーズ】
きっと彼女も断腸の思いで告げ口したに違いない。なら、どうしてあんな強行手段に出たんだろう。せめて一言ことわってくれれば、印象も変わっただろうに。
「よし、悩んでいても仕方がない!図書館に行って、直接ハーマイオニーと話してみる。何か変わるかもしれない!」
そうと決めたクリスは、宿題一式とチョコチップクッキーを持って図書館に向かった。ハーマイオニーの姿は探さなくてもすぐに見つかった。広いテーブルを、教科書やレポートをいっぱいに広げ占領している。クリスは何も言わず、まずハーマイオニーと同じテーブルに座った。
「……何の用?」
開口一番、ハーマイオニーの声は冷たかった。しかしここで挫けてはいけないと、クリスは己を鼓舞させ、ルーピン先生に貰ったチョコチップクッキーを差し出した。
「ルーピン先生に、クリスマス・プレゼントのお礼にってクッキーを貰ったんだ。一緒に食べないか?」
「ここは飲食厳禁よ。他に用が無いなら帰って」
取り付く島もなく、クリスは肩を落としてトボトボと談話室に戻って行った。談話室では、ハリーとロンが待っていてくれて、クリスが「ダメだった」と答えると、ポンと肩を叩いて慰めてくれた。
それから1週間後、3人はまだハーマイオニーと一言も口をきけないまま授業が始まった。最初の授業はクリスの大好きな『マグル学』だった。しかし、この時ばかりは流石のクリスも上機嫌とはいかなかった。いつもなら隣同士座って授業を受けるのに、今日のハーマイオニーはピリピリした空気を放ち、誰も近寄らせなかった。
次の授業は『占い学』だった。今度こそ、とは思っていたが『占い学』に全くと言っていいほど興味を抱かないハーマイオニーを相手にするのは困難だった。結果、クリスはネビルと組んでお互いの手相を見合った。
その隣でハリーとロンが手相を見ていると、トレローニー先生がすーっとやって来て、ハリーの生命線が今まで見た生徒の中で一番短いと言って、ハリーはますますうんざりして不機嫌になり、ハーマイオニーは聞こえよがしにため息を吐くという、最悪の雰囲気になった。