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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第21章 【消えたスキャバーズ】


 クリスは一瞬、指輪の事を言われたのかと思って、とっさに左手を隠した。だがロンが言ったのはルーピン先生からもらったチョコチップクッキーの事だった。

「その袋は?先生に貰ったの?」
「こっこれはルーピン先生お手製のチョコチップクッキーだ。なあ2人とも、これを持って、ハーマイオニーと仲直りしに行かないか?」
「冗談だろう!?何であんな自分勝手な奴の為に、手土産持って頭を下げに行かなきゃならないんだ?」

 ロンはカンカンに怒っていたが、ハリーは少し迷っているようだった。しかし箒をバラバラにされたショックは隠せないもので、暗い顔をしていた。確かに、クリスもラジオの事を思うと、素直に「ごめん」と言える確証は無かった。しかし、だからと言ってこのままと言うわけにはいかない。クリスはルーピン先生に言われた事をそっくりそのまま告げた。

「確かに、思いがけないプレゼントを貰って嬉しい気持ちは良く分かる。だけど、私達が重ねてきた時間、思い出や絆を天秤にかけて、どちらの方が重いのかよく考えてみれば良い」
「何それ、先生の受け売り?」

 悲しきかな、ルーピン先生に言われたセリフは、すぐにロンによって見抜かれた。

「とにかく、向こうから謝って来ない限り、僕は許す気はないよ。あいつが何をしたのか、分かってないんだ。クリスも折角貰ったラジオをバラバラにされて、本当に心の底からあいつを許せるのかい?」
「それは――まあ、半分は許せないが……」
「だろう?いくらルーピン先生に言われたからって、クリスも無理に謝る必要ないさ」
「うーん……ハリーはどう思う?」
「僕も、心の底から素直に謝らなきゃ、意味ないと思うな。それに今はハーマイオニー自身が僕達に反感を持っていると思うし」
「そうか……」

 クリスは重いため息を吐いた。折角謝っても、相手がそれを受け入れてくれなければ何の意味も無い。クリスは袋小路に立たされた気分だった。仲直りしたいが、相手がそう思ってくれなければ上手くいかないのは当然だ。クリスは甘いチョコチップクッキーを食べながらハーマイオニーの事を思った。
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