第21章 【消えたスキャバーズ】
午後の授業は『闇の魔術に対する防衛術』だった。こればかりは誰もクリスを不機嫌にさせる者はいなかった。なんとルーピン先生は、室内だと言うのにクリスの手作りマフラーをして来てくれたのだ。もう嬉しくて、クリスはこの時ばかりはハーマイオニーと仲違いしている事を忘れ、上機嫌で授業を受けることが出来た。その代り、また先生の体調が悪くなっている事に気づかなかった。
授業が終わると、ロンがハリーとクリスに話しかけた。
「なんだかルーピン先生、また体調が悪化していなかったか?いつもより痩せて見えたけど」
「えっ、それ本当か?」
「うん。僕が『ディメンター祓い』の訓練の事を話しても、なんだか上の空みたいだったし」
「私としたことが……マフラーに気を取れて先生の体調に気づかなかったなんて……なあ、先生ってどこが悪いのか知らないか?」
2人は首を横に振った。その時、後ろから「チッ」と大きく舌打ちする音が聞こえた。振り返るとハーマイオニーが立っていた。何の不満があるのか、大層不機嫌そうだった。
「ハーマイオニー、何の用だよ」
ロンが怒った口調で返事をした。
「なんでもないわ」
「いや、あるね」
「そうね……強いて言えば、彼方達はどこに目をつけているのかって事よ」
「どういう意味だ?」
クリスが訊ねると、ハーマイオニーは感じ悪く顎をしゃくって言った。
「貴女って、ルーピン先生、ルーピン先生って言っている割には、先生の事何も知らないのね」
「それはどういう事だ?」
いくらハーマイオニーでも、言って良い事と悪い事がある。クリスとハーマイオニーとの間にバチバチと火花が散った。言葉次第では、ハーマイオニーを一生許す事が出来ない場合もある。
「どういう事もなにも、そのままの意味よ。本当に先生が好きなら真っ先に気づくべきだわ」
「へえ……それじゃあお前は先生の病気について何か知っているんだな」
「ええ、貴女よりはね」
ハーマイオニーは触れてはいけない琴線に触れてしまった。途端にクリスの表情が変わり、一触即発の雰囲気が漂い始めた。