第18章 【ナミダ・ナミダ・ナミダ】
「まあ、あれだハリー。少ししたら昼食だから、それまで宿題でもやっていたらどうだ?」
「クリス!今は“宿題”よりも大切な話しをしているのよ!ねえハリー、ブラックを追いかけるなんて事しないわよね?」
「考えても見ろよ、ブラックの為に命を棒にふる事ないぜ?」
ハリーが突然立ち上がり、ロンとハーマイオニーの方に振り返った。その顔は冷静に見えたが、逆にそれが怖かった。いつもとは違う、青い炎の様な静かで低い声がハリーの口から出た。
「ディメンターが僕に近づくたび、僕が何を見たり、何を聞いたりするのか分かるかい?」
「それは、分からないけど……」
「母さんが泣き叫んで、ヴォルデモートに命乞いをする声が聞こえるんだ。もし君達が、自分の母親が殺される直前にどんな風に叫んでいるかを聞いたら、そんな簡単に忘れられるかい?それが自分の親友だと思っていた人に裏切られ、そいつがヴォルデモートの手下だとしたら――」
「でも彼方にはどうしようもない事よ!」
ハーマイオニーは、泣く寸前だった。今がクリスマス休暇中で良かった。談話室には4人以外誰もいなかったので、ハーマイオニーが声を張り上げ涙ながらに訴えても気にするものは誰もいなかった。
「ディメンターがブラックを捕まえて、アズカバンに連れ戻すわ。それが当然の報いよ!」
「だけどファッジが言ってたじゃないか!ブラックはアズカバンにいても平気なんだ、他の魔法使いと違って、アズカバンは奴にとってちょっとした別荘みたいなものなんだ!!」
「じゃあどうしたいって言うんだよ、まさかブラックを殺したいなんて言わないだろう?」
「馬鹿言わないでよロン!ハリーが人を殺したいなんて思うわけないじゃない!」
ヒステリック気味になっているハーマイオニーとは逆に、ハリーは沈黙を貫いた。しかしその顔はもう冷静ではなかった。憤怒の中で、何かを考えている様だった。そして思い出したように突然口を開いた。
「マルフォイは知っているんだ……」
「ドラコが?」
「そうだよ、あの日、クリスも覚えてるだろう。腕が痛いって僕らのテーブルに来た日『僕ならディメンターに任せていない、自分で復讐する』って。あいつの家は純血主義で、父さんと母さんが殺された時もヴォルデモートの手下だったんだ、だから――」
「『例のあの人』って言えよ!頼むから!!」