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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第18章 【ナミダ・ナミダ・ナミダ】


 冷静にそう言うと、ロンもハーマイオニーも何も言えなくなってしまった。クリスがダンブルドアに教わった、母親の死の真相について2人に話したのはこれが初めてだ。それまで、身体が弱くてクリスを生んだ時に死んだと言っていた。
 クリスは紅茶を飲み干すと、席を立った。

「どこに行くんだよ」
「談話室。ルーピン先生へのマフラーがもう少しで終わるんだ」
「こんな時に限ってマフラーかよ!君ってそんなに友達がいのないヤツだったんだな!!」
「こんな時だからこそ、いつも通りに過ごすんだろ?」

 クリスは大広間を出て、談話室に戻った。確かにこんな時だからこそ、平常心を保つのが賢明だ。4人とも、昨日の話しを聞いて多かれ少なかれ動揺している。特にハリー自身のダメージは理解できないほど凄まじいものだろう。だからこそ、クリスだけは取り繕わず、いつも通りハリーに接してやりたかった。
 クリスがいつも通り、暖炉の前の特等席でマフラーを編んでいると、男子寮から足音が聞こえてきた。足音の主はハリーだった。今まで一睡もできなかったんだろう。目の下にくっきりと隈が出来ていた。

「お早う、ハリー。いや、もう“遅よう”かな?」
「皆は?どこ行っちゃったの?」
「今日が休暇1日目だよ。殆どの生徒は家に帰ってるさ」

 その時、談話室の扉がパッと開いて、ロンとハーマイオニーが入って来た。2人はギクシャクした態度でハリーに声をかけた。

「ハリー、顔色が悪いけど大丈夫?」
「……大丈夫だよ」
「本当?それなら良いけど……もうすぐ昼食の時間だよ。何か食べた方が良いよ」
「あんまり食欲がないんだ」

 ハリーの目は虚ろで、ほんのりだが充血していた。泣いていたんだと思うと、何故昨日『三本の箒』なんかに入ってしまったんだろうと後悔してきた。折角のクリスマス休暇だっていうのに、お祭り気分もクソもない。

「ねえ、ハリー、聞いてちょうだい。私たちが昨日聞いた事で彼方がとても大変な思いをしているのは分かっているわ。だからって軽率な行動はしないでね?」
「軽率な行動って?」
「例えば、ブラックを追いかけるとか」

 ロンがにべもなく言った。クリスは下手な2人の芝居にため息を吐いた。ハリーもそれを感じたのか、何も言わずにクリスの隣に座って暖炉の炎を見ていた。
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