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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第18章 【ナミダ・ナミダ・ナミダ】


 ハリーはショックで呆然としていた。誰だって、あんな話を聞いた後で元気を出せと言う方が無理だった。とにかく4人は『三本の箒』を出て、もう1度ハニーデュークスに向かった。
 ロンが気を使って「ハリー、食べたいお菓子があったら買うよ!?」と声をかけたが、ハリーは「いらない」と小さく答えると、店主がいなくなった隙に階段を下り、倉庫の撥ね戸を開け1人で行ってしまった。クリスは追いかけるのが精一杯で、ろくにハリーと話も出来なかった。
 いや、出来たとしても何と言えばいいんだろう。自分の両親が親友の裏切りで死んだのだ。それだけでは無い、今度はハリー自身さえ殺そうと躍起になっているのだ。とても何か言える心情ではなかった。その後の大広間での夕食中も、ハリーは死んだような目で黙々と食べ物を口にしていた。それを見て、ロンもハーマイオニーも、何も言える事がなかった。

 談話室に戻ると、フレッドとジョージが学期末のお祝い気分で、早速ゾンコの店で仕入れてきた『クソ爆弾』を爆発させて騒いでいた。ハリーはそれに見向きもせず、独り男子寮に上って行った。こんな時に、とてもじゃないが宿題なんてする気が起きず、クリスはなんとか気を紛らわせようとルーピン先生にあげるマフラーを編むのに没頭することで時間を潰した。
 途中、ロンが寮までハリーの様子を見に行ったが、返事はなく、ハリーはカーテンを閉め切って寝ていたと言う。きっと寝たふりをしているだけだと思ったが、誰も責める権利などなかった。

 そして翌朝、いつものようにクリスが夢遊病のごとくフラフラと大広間に行っても、ハリーはいなかった。紅茶を一口飲んで、やっと頭が回転し始めてくると、クリスはぽつりと呟いた。

「もう、これはハリー自身に任せるしかないな」

 開口一番そう言うと、ロンもハーマイオニーも怒ったような口調で反論した。

「放っておけって言うのかよ!君、それでもハリーの友達かい?」
「クリス!真剣に考えて。ハリーは事実を知ってきっと自暴自棄になるわ!?放っておいたら何をするか分からないのよ!!」
「だからと言って止められないだろう。それに、私の母様も『例のあの人』に係わって死んだも同然だ。ハリーの気持ちも、少し理解できる」
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