第17章 【優しい手】
クリスがおやつを食べ終えるとの同時に、スネイプもネビルが作った失敗作の「縮み薬」の解毒剤を完成させた。早速ゴブレットに注ぎ、クリスの目の前に差し出す。
「これを飲みたまえ。そうすれば元の体に戻れる」
「もとのからだ?」
「説明は不要だ。飲めば分かる」
差し出されたゴブレットの中を見て、クリスがあからさまに顔をしかめた。中にはどろどろした緑色の液体が入っている。わがままお姫様として育ったクリスにとって、理由も無くこのままこれを飲めと言われても、簡単に受け入れられるものではなかった。
「イヤです、のみたくありません」
「我儘を言うな、飲めと言ったら飲め」
「う~……じゃあのんだらごほうびくれますか?」
「……良かろう。なんだ?また菓子か?」
「いえ、がんばったごほうびとして、頭なでてください」
想像すらしていなかった言葉に、スネイプは一瞬ウッと言葉をつらませた。しかし飲ませなければ元の姿に戻れないし、純粋な瞳で見つめられると嫌だとは言えなくなってしまう。スネイプは眉間にしわを寄せ、こめかみをひくひくさせながら3度目のため息を吐いた。
「……分かった、頭をなでれば良いのだな」
「はい!では――」
一瞬ゴブレットの中身を見て苦虫を噛み潰したよな顔をしたクリスだったが、ぎゅっと目をつぶって一気に薬を飲み干した。すると体の内側からミシミシと骨が伸びるような不愉快な感覚がして、クリスは思わずその場で身をかがめた。だがものの10秒もしない間に、体はもちろん頭の中もいつものクリスにも戻った。
「戻ったようだな」
「……はい」
元の姿に戻った、までは良い。問題は縮んでいた時の記憶までハッキリ残っていることだった。“あの”スネイプに自ら「頭をなでて欲しい」などとお願いした事に、クリスは恥ずかしくて今すぐこの場で死にたくなった。